Avivaの気候戦略に見る組織文化のあり方

2023 / 1 / 6 | 執筆者:山本 香 Kaori Yamamoto

エコネットワークスでは国内外の優良レポートを題材にした社内勉強会を定期的に開催しています。先日の勉強会では、TCFD開示で定評のあるイギリスの保険会社Avivaのレポートを読みました。TCFD提言に沿った開示の中で、私が特に独自性を感じたのが、気候対策への意識を組織のすみずみに行き届かせるための同社の戦略です。

一人ひとりの意識と行動が組織文化をつくる

Avivaは、気候戦略の柱の一つとして、Embedding climate change across our cultureを掲げています。
embedは、acrossと併せることで「全体に根付かせる」という意味になります。つまり同社は、気候変動の取り組みを企業文化として組織全体に根付かせることを目指していると言えます。

その内容を見てみると、気候科学や関連スキルの研修、電気自動車(EV)のリース、再生可能エネルギープロバイダーへの乗り換えの促進、個人の行動を促すアプリの提供など、従業員一人ひとりが常に気候対策への意識を持ち、行動につなげられるよう後押しすることに主眼が置かれています。
企業文化の醸成というと、例えばdevelop corporate cultureのような英語表現が思い浮かびますが、Avivaの気候戦略を表す上記の表現からは、組織文化とは何もないところから作り上げるものというより、一人ひとりの意識と行動が組織全体に広がり、結果的に形成されるものという視点を見て取ることができます。

個に向けた力強い呼びかけ

また同社のレポートでは、一人ひとりの行動を起点とする気候戦略を効果的に伝えるための力強い表現も印象的です。
代表的なものとして、従業員を対象としたガイドブックの序文にある文章を以下に引用します:

…it will definitely change your usefulness as a human. It’ll definitely help the planet. And it’ll definitely entertain you.
(試訳:一人の人間としてのあなたの有用性は間違いなく変わります。間違いなく地球を救う力になるでしょう。そして、間違いなくあなたに満足いただけるはずです)

この中で繰り返し使われているdefinitelyという言い切る表現や、二人称youで個に向けて呼びかける表現には、一人ひとりに行動を通じて変革へと導く力があるとの信頼が感じられ、読み手の心に強く訴える迫力があります。

Avivaの同レポートを読み、TCFDのガイドラインに沿った情報開示の中でも、自社の気候対策で大切にしている考え方を効果的に伝え、独自性のある報告にするための工夫を学ぶことができました。

Photo by Jeremy Bishop via Unsplash

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