Plain languageで伝える

ニュージーランドでは現在、Plain Language Billという法案が審議されています。この法律は、公共機関などに対し、想定される利用者にわかりやすい言葉で(appropriate to the intended audience)、簡潔明瞭に(clear, concise)、よく整理された(well-organised)文書を書くよう求めるものです。

「ニュージーランドに住む人々には、政府が自分たちに何をするよう求めているのか、自分たちにはどんな権利があるのか、政府から何を得る資格があるのかを、理解する権利があります」と、この法案を提出したレイチェル・ボヤック議員は述べています。

Plainな発信を求める法令

このように平易な言葉や文章を推進する動きは、他国でも見られます。例えば米国では、2010年にPlain Writing Act(平易な文章法)が可決されました。Center for Plain Languageが2012年から2021年まで毎年実施している調査によると、この法の施行後、多くの政府機関で改善が見られます。またカナダでは、野党保守党の新党首ピエール・ポワリエーヴル氏が、自身が首相に当選したらPlain Language Actを成立させると主張しています。

目指すべきはインクルーシブな発信

税金や医療、住居に関連する情報をはじめ、政府が発信する情報には、市民生活に直結するものがたくさんあります。「理解できないような情報を政府が発信すれば、本来なら利用できるはずのサービスをあきらめてしまう人がいるかもしれない。そのために政府を信頼できなくなったり、社会生活に十分に参加できなくなったりする人もいるだろう」と、前出のボヤック議員は言います。そうした影響を最も強く受けるのは社会的に弱い立場にある人々であることから、「わかりやすく、簡潔明瞭で、よく整理された」情報の発信は、社会正義という観点からも重要です。

Plain languageを推進する国々では、法律以外の取り組みもさかんです。たとえば、米国ではClearMark Awards、ニュージーランドではPlain Language Awardsという賞が、平易な文章で発信する公的機関や民間団体に与えられます。また、以前にこのブログでも紹介しましたが、ニュージーランドのPeople First New Zealandという団体は、文書をわかりやすい平易な表現に「翻訳」する事業を行っており、政府や自治体なども利用しています。

さて日本ではどうでしょう? 政府や自治体が発信するインターネット上の情報は、以前よりも読みやすくなっている印象を受けますが、紙の文書類は、難解なものが少なくありません。政府や自治体による改善努力が期待されます。

一方で、今年の始め、学校からの文書を「やさしい日本語」にするという小学校の取り組みがツイッターで話題になりました。こうした現場での具体的な取り組みを積み重ねていくことにも、大きな意味があると思います。

 

Photo by Brett Jordan on Unsplash

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