Translators in Sustainability
96歳の言葉を心に刻む「自然が私たちを救う」
先日亡くなったエリザベス女王と同じ96歳のイギリス人、動物学者で映像プロデューサー、ナレーターでもあるデイビッド・アッテンボロー氏は、和暦で言えば大正15年生まれ。昭和初期の時代から、イギリス、そして世界中の動物や自然をみてきたアッテンボロー氏の言葉には重みがあります。
アッテンボロー氏「自然は自らを救う」
国連環境計画(UNEP)のインタビューでアッテンボロー氏はこう述べています。
“We’ve worked out how to kill them. Now we could give them a chance for them to come back and save themselves and save us.”
人類はこれまで自然界に大きなダメージを与え続けてきました。私たちは今、自然が再生し、自然が自らを、そして私たちを救う機会を持たせるべきです(7:30 – 7:41)(仮訳)
“We’ve worked out how to save them from what we have done to them. The natural world has got the balances right, and we must restore those.”
これまでの私たちの行為の結果から自然界を救うことに取り組んでいます。自然界には正しいバランスがあり、私たちはそのバランスを再構築しなければなりません。(6:18 – 6:28)(仮訳)
「地球を救う」「自然を守る」といった言葉を私たちはよく使いますが、アッテンボロー氏は、自然が私たちを救うのだと言います。確かに、自然や地球が健全な状態であることは人類にとっての死活問題です。「地球を救う」というのは少し傲慢な言い方で、人間は自然界の持つレジリエンスを妨げることなく、自分たちのために、自然界のバランスを取り戻すべく協力するという謙虚な態度が必要なのかもしれません。
エリザベス女王「子どもたちのために」
アッテンボロー氏と長年親交のあったイギリス王室でもサステナビリティの取り組みは盛んで、王室のウェブサイトには環境のページもあります。昨年イギリスで開かれたCOP26で、女王は次のようなメッセージを出しています。
“Of course, the benefits of such actions will not be there to enjoy for all of us here today: we none of us will live forever. But we are doing this not for ourselves but for our children and our children’s children, and those who will follow in their footsteps.”
もちろん、こうした行動の恩恵を、現代に生きる私たちすべてが享受できるわけではないでしょう。誰も永遠には生きられません。しかし自分たちのためではなく、子どもたちやその子どもたち、さらにその先を行く人々のために、私たちは行動しているのです。(仮訳)
今年、2022年に生まれた命が96歳になるのは2118年。子どもたちにとって、2100年は架空の未来ではありません。エリザベス女王の言葉は特段、目新しいものではありませんが、次世代ために自分は本当に想像力を持って行動できているのか。追悼の想いを、次世代を想い行動する力に変えていかなければと、思いを新たにしました。
アッテンボロー氏のドキュメンタリーはオンラインでもたくさん見ることができます。字幕付きで、気負わずに大人も子どもも楽しめる内容です。
Photo by Oli Lynch on Pixabay