インターセクショナリティ 差別の複合的な構造を表す概念

2022 / 8 / 31 | カテゴリー: | 執筆者:EcoNetworks Editor

私がintersectionalityという言葉に初めて出会ったのは、2021年の暮れに出版物の翻訳をしていたときのことでした。日本語では「インターセクショナリティ」または「交差性」と訳されています。

インターセクショナリティとは

国連ウィメン日本協会のサイトによると、「インターセクショナリティの考え方は、社会的アイデンティティが複数重なり合うことによって、複合的な差別体験が生まれることを示しています」とされています。

intersectionalityという用語は、コロンビア大学およびカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の法学部のキンバリー・クレンショー教授が、1989年に初めて使いました。「黒人」と「女性」という2つの要因が交差する黒人女性が、黒人男性や白人女性よりも大きな抑圧を受けている、ということを表現したのです。人種と性別のほかにも、社会階層、経済階層、国籍、年齢、障がい、さらに性的指向といった属性も絡み合うことがあります。

日本での広がり

この言葉・概念は最近、日本でも一気に広がりつつあります。

例えば大手メディアでは、朝日新聞の論壇時評で2022年5月26日にこの怒りの言葉どこから「インターセクショナリティ」と沖縄の50年が掲載されました。毎日新聞でも「ぶんかのミカタ」の枠で7月16、23、30日に3回にわたって連載されました。
インターセクショナリティーとは/上 一人一人の経験に迫る概念=社会学者・下地ローレンス吉孝
インターセクショナリティーとは/中 部落女性の抵抗と創造に学ぶ=社会運動研究者・熊本理抄
インターセクショナリティーとは/下 沖縄/大和 「すきま」を保ちつつ=沖縄国際大非常勤講師・大城尚子

その他、雑誌のウェブ版でも、インターセクショナリティについて詳しく解説している記事がいくつもあります。この言葉のもつ重要性が認識されつつある現れといえます。

環境問題とインターセクショナリティ

環境汚染や気候変動といった環境問題に関連しても、貧しい人々、有色人種のコミュニティなどが大きな悪影響を受けている話をよく耳にします。過去のブログでも、米連邦政府からの山火事防止の補助金を受領できているのは、主に白人が居住しており、なおかつ経済的に豊かな地域に偏っているというニューヨーク・タイムズ紙の報道を紹介しました。

複数の差別の要因、そしてその重なり合いに細やかに注意を向けることが、これから真に公正な社会を実現するうえで求められていくと思われます。

(五頭美知/翻訳者)

Photo by Cody Pulliam on Unsplash

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