水と衛生の課題解決にも必要な「レジリエンス」の視点

2022 / 7 / 5 | 執筆者:立山 美南海 Minami Tateyama

世界では、4人に1人にあたる20億人が安全な飲み水を入手できない状態にあります。また、23億人が自宅に基本的な手洗い設備がなく、4億9,400万人が屋外排泄(家や近所に利用できるトイレがなく、草むらなどで用を足す)をしています(参考)。

ユニセフは、こうした水と衛生(Water、Sanitation、Hygieneの頭文字をとってWASHと呼ばれます)の課題解決に取り組んでおり、その成果を毎年報告しています。

レジリエンスとWASHの関係

アジア太平洋地域での2021年の成果をまとめたレポートの中で、『Climate-resilient WASH(気候変動に対してレジリエントなWASH)』という章タイトルが目につきました。

ユニセフが注力するアジア太平洋地域は、世界でも特に災害の多い地域です。同地域が災害に脆弱であることはIPCCの最新報告書でも指摘されており、実際のデータにも表れています。全世界の災害統計をまとめたレポートによると、2021年には、干ばつ、洪水、地震、山火事などあらゆる災害の40%がアジアで発生し、全死亡者数の49%、全被害者数の66%をアジアが占めました。さらに、そうした被害は気候変動の進行とともに頻発・甚大化することも予想されています。

レジリエントなWASH、どう実現する?

手洗い設備やトイレなどの衛生設備がせっかく整ったとしても、気候変動や災害の影響で使えなくなってしまえば、課題解決にはなりません。ユニセフのWASH事業では、Climate-resilient WASHの実現に向けて、3つのベンチマークを設定しています。

(i) climate-resilient WASH services(気候変動に対してレジリエントなWASHサービス)
(ii) climate-resilient communities(気候変動に対してレジリエントな地域社会)
(iii) use of renewable energy(再生可能エネルギーの使用)

例えばカンボジアでは、地理情報(GIS)システムと過去の洪水データをもとに洪水リスクをマッピングし、高リスク地域の特定を行いました。また飲み水については、従来は洪水が起こると汚染される水源に依存していましたが、ユニセフの支援のもとで安全な水を提供する給水ステーションが設置されました(気候変動に対してレジリエントなWASHサービスの実現)。

フィジーやキリバス、バヌアツなどの島嶼国でも、各地域が自らリスク評価と安全な水の管理を行うための仕組みを強化し、将来の気候変動の影響に備えられるようサポートしています(気候変動に対してレジリエントな地域社会の実現)。

またミャンマーでは、太陽光発電によって水をくみ上げる設備が18地域に導入されました(再生可能エネルギーの使用)。

Climate-resilient WASHのこれから

ユニセフは現在、Climate-resilient WASHを実現するソリューションの目録作成を進めており、国や地域の状況に応じて適切なソリューションを選択できる仕組みを整えようとしています。目録には、各ソリューションの技術的特性に加え、関連する温室効果ガス排出量やエネルギー効率の情報も含まれるとのこと。そこにはどのようなソリューションが並ぶのか、それらのソリューションによって世界のWASHを取り巻く状況がどのように改善していくのか、今後の展開に期待したいです。

Photo by Gyan Shahane on Unsplash

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