気候アクション 求められる具体性と実行可能性

2022 / 6 / 28 | 執筆者:山本 香 Kaori Yamamoto


気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は、昨年10月、基準の一部改訂とともに新たなガイダンス『Guidance on Metrics, Targets, and Transition Plans指標、目標、移行計画に関するガイダンス )』を発表しました。

求められるSpecificなアクション

今回のガイダンスでは、移行計画の開示について詳しく説明されています。各国の政府や企業が気候変動に関するコミットメントを続々と公表する中で、その実現に向けた具体的なアクションに目が向けられるようになったことが背景にあると考えられます。

ガイダンスは、効果的な移行計画の条件の一つとして、Actionable, Specific Initiatives.(実行可能で具体的なイニシアティブ)であることを定めています。

一例として、ガイダンス内で開示例としても紹介されているネスレのネットゼロ・ロードマップ を見てみると、2050年のネットゼロ実現に向けた道筋が分かりやすくまとめられています。

まず2025年に向けて20%の排出削減を掲げ、そのための取り組みとして「2022年までに一次サプライチェーンにおける森林破壊ゼロ」など複数のマイルストーンを設定、その後2030年までに50%排出削減を実現するべく、2025~2030年の期間に取り組む具体策として「2030年までに植林2億本」等を定めています。
漠然としたアクションだけでなく、具体的な数値も示されていることで、計画全体に説得力があります。

実行可能性はどう示す?

では、Actionableかどうかという点はどうでしょうか。
昨年2月に発表されたネスレの報告書 には、直前でSBTi の基準に沿って目標を設定したことに触れた上で次のように書かれています。

They provide a clearly defined pathway for coupling future-proof growth with reductions in GHG emissions.
試訳:それにより(=SBTi基準で設定した目標)、今後の確かな成長とGHG排出削減をともに実現させる明確な道筋が示されています。

couple A with Bは、「AをBと連結させる」という意味の表現。この一文は、排出削減だけでなく、企業としての成長も同時に追求していくための道筋であることを伝えています。確かに、排出だけを抑えられても、事業として存続できなければActionableとは言えません。

Actionableな移行計画を考えるには、排出削減だけを切り離して考えるのではなく、まず事業の在り方や成長の中身を捉え直すところから始める必要がありそうです。気候変動や排出に伴うあらゆるコストを誠実に負担しながら、どのようにビジネスを行っていくのか。
今後は、気候対策の内容と併行して、企業の新しい成長のカタチについても具体的に語られることが期待されます。

Photo by GeoJango Maps via Unsplash

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