化学肥料とサステナビリティ

2022 / 6 / 5 | 執筆者:Yasuko Sato

日本の有機農業の農地は1%に満たず、私たちの食生活は化学肥料に支えられています。農薬より少しわかりづらい化学肥料の問題について、少し考えてみたいと思います。

化学肥料は有限な資源

植物の成長に欠かせない3大栄養素の窒素、リン酸、カリウム。日本は、これら全ての原料を輸入に頼っています。窒素を作るには、その原料となるアンモニアの製造にナフサ(原油)や天然ガスが必要です。また、リンはリン鉱石から、カリはカリ鉱石から取り出される有限な資源です。採掘可能なリンの推定埋蔵量は、2022年4月の農水省の資料では320年。欧州のCritical Raw Materials Allianceによれば、埋蔵量は2030年頃をピークに50~100年とする研究もあるようです。

環境や人への影響

土壌の循環

土の中の微生物は、有機物を無機物に分解します。植物はその無機物を吸収して成長し、やがて植物が枯れると、それを微生物が分解する、といった循環をしています。化学肥料は最初から無機物なので、植物は投入された肥料を直接吸収します。微生物の栄養となるもの(有機物)がないため、土の中の微生物が減り、自然の循環が乱れます。そのため、さらに化学肥料が必要になる、という悪循環に陥ります。

過剰な栄養

投入した肥料の一部は、土壌に浸透して地下水に流れ込みます。特に、窒素の過剰使用により生じる硝酸性窒素は、地下水から河川や湖沼、海に流れ、富栄養化の原因になります。また、作物にも過剰に吸収され、人の健康を害することもあります。これは、窒素が多すぎれば、化学肥料でも有機肥料でも起こりますが、化学肥料は分解のプロセスを必要とせず有機肥料より即効性があるため、植物への吸収も、環境への流出も一層過剰になりがちです。

世界を支える化学肥料

弊害もある化学肥料ですが、77億という世界の人口を支えているのも化学肥料です。様々な世界情勢の影響で、この1年半(2022年5月時点)で肥料の国際価格は3倍以上となり、日本を含む世界の農業が大きな打撃を受けています。特にアフリカにとっては、化学肥料の高騰により飢餓人口の増加が目前に迫る深刻な状況です。

持続可能な農業へ

環境や持続可能性への配慮から、日本やアフリカを含む世界中で、化学肥料から有機肥料への移行や、減肥料の方法が模索されています。日本でも農家さんや企業での取り組みは進んでいますが、まだ一部に留まっている印象です。肥料の問題への理解が深まり、社会全体で取り組みが加速することを願っています。

(翻訳者、翻訳コーディネーター/ Yasuko Sato)

Photo by Gabriel Jimenez on Unsplash

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