Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
Canaries in the coalmine 鳥たちからの警鐘
毎年5月10日から16日までは「愛鳥週間(バードウィーク)」。毎年5月(と10月)の第二土曜日は「World Migratory Bird Day(世界渡り鳥の日)」です。これらにちなみ、今回は鳥類にスポットを当てたいと思います。
鳥は環境の指標
世界にはおよそ1万1000種の鳥類が生息しています。鳥は、環境の健全性を測る優れた指標だと言われています。環境の変化に敏感であることに加え、調査をして個体数を数えるのが比較的容易だからです。
英ガーディアン紙に、最近発表された世界の鳥類の状況をまとめた論文が紹介されています。それによると、近年、世界中の多くの鳥類種の個体数が減っています。特定の地域や種を対象とする保全活動によって個体数が回復している例もありますが、世界全体で見ると減少している種が48%に上ります。北米では57%もの種が減少傾向にあり、1970年以降に鳥の個体数が30億羽も減ったと言われています。欧州でも1980年から2017年の間に5億6000~6億2000万羽が減少したとする研究があります。
論文では、鳥類の多様性を脅かす主な要因として以下の8つを挙げています。どの要因も、人間の生活と密接に関連するものです。
- 土地の被覆や土地利用の変化
- 生息地の分断と劣化
- 狩猟と捕獲
- 侵略的外来種や病気
- インフラ・電力需要・公害
- 農薬・医薬品の使用
- 気候変動
- 世界貿易の影響
炭鉱のカナリア
上記のガーディアン紙の記事では、タイトルにCanaries in the coalmineという慣用句が使われています。これは、迫りつつある危険を早い段階で察知して警鐘を鳴らす人や物を表す表現です。昔、炭鉱作業員が炭鉱に入るときにカナリアを連れていったのが言葉の由来とされています。カナリアは人間よりも有毒ガスに弱いので、カナリアの死がその場の危険を知らせ、脱出の合図になりました。
鳥類の減少は、地球の状況が変化していることを示すシグナル。鳥たちは炭鉱の中のカナリアのように、私たち人間に危険の兆候を知らせています。鳥類の多様性を保全するためにも、より広く環境の健全性を守るためにも、その声に耳を傾けて行動を起こすことが求められています。
気候変動などの地球規模の問題を前にすると、一人一人にできることが小さく見え、無力感を覚えがちです。でも鳥は、街中や、公園、田畑、川沿い、海辺で出会える身近な動物です。私たちの行動変化が、鳥たちを守ることにもつながるのだと考えれば、できることから一歩踏み出すきっかけになるかもしれません。
Photo by AARN GIRI on Unsplash