Inclusive language 「誰一人取り残さない」表現

2022 / 5 / 7 | 執筆者:立山 美南海 Minami Tateyama

・性の多様性に配慮して、he/sheではなく単数のtheyを使う
・「会長」はchairmanではなくchairpersonと表現する
・障がいのない人を「ふつう」と示唆するような表現を避ける

上記はいずれも、Inclusive languageの考え方に沿ったものです。日本語では「包摂的言語」や「インクルーシブ・ランゲージ」と呼ばれますが、定着した呼び方はまだないようです。

インクルーシブ・ランゲージとは

米言語学会(LSA)は、Inclusive languageを次のように説明しています。

Inclusive language acknowledges diversity, conveys respect to all people, is sensitive to differences, and promotes equal opportunities.
(試訳:インクルーシブ・ランゲージは、多様性を受け入れ、すべての人々への尊重を伝え、違いに配慮し、機会平等を推進するものである)

つまり、ジェンダーや障がい、人種、民族、年齢、経済的地位などあらゆる要素における多様性を意識し、誰も差別せず、誰にも疎外感を与えない表現を指します。

差別をしないのは当たり前のことですが、inclusiveの逆のexclusive(排他的)な表現は、悪意なく無意識に発せられることも多々あります。またその表現は、言葉に限らず、写真などの非言語の表現である場合もあります。例えば、おもちゃ売り場で「男の子用」と「女の子用」にコーナーが分かれていたら、戸惑う子どももいるでしょう。その「表現」の裏には、「男の子はこういうおもちゃが好き」「女の子はこういうおもちゃで遊ぶもの」という無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)があります。そうしたバイアスはマイクロアグレッションを生み出し、誰かを傷つける可能性があります。

インクルーシブ・ランゲージを広めるガイドライン

多様性の尊重がますます重視される中、インクルーシブ・ランゲージの概念や事例について国際機関や学術機関がまとめたガイドラインも発行されています。

米国の各州における芸術支援機関の情報をとりまとめるNational Assembly of State Arts Agencies(NASAA)は、基本原則として以下(抜粋)を挙げています。
・Know which populations within your audience have fewer advantages, are marginalized and/or are objects of bias.
(試訳:オーディエンスの中で、不利な立場に置かれた人々、社会から取り残された人々、バイアスの対象となる人々を認識する)
・Try to use language preferred by the group
(試訳:その集団が好む表現を使う)
・Describe a person or group at the appropriate level of specificity. To avoid objectification, identify a group or an individual as a member of a group only when it is relevant to your message.
(試訳:人や集団に関する表現は、適切な具体性をもったものとする。人を人として尊重するため、内容に関連する場合に限り、その集団や個人の属性を示す)

またAP通信は4月、APスタイルブックの最新版にInclusive storytelling(インクルーシブな文章の書き方)に関するチャプターを加えると発表しました。その中には、単数のthey/them/theirの使い方やトランスジェンダーの方の呼び方などに関するガイダンスが含まれます(正式な発表は6月予定)。

そのほか、国連はジェンダーに特化したガイドラインを発表しています。

言葉の力をポジティブに使う

インクルーシブな表現が広まれば、これまで居心地の悪さを感じていたり何気ない言葉に傷つけられたりした人々にとっても生きやすい社会の実現に近付けます。エコネットワークスでは、こうした世界的な動きを踏まえ、多様性やインクルージョンに配慮したご提案を行っています。

こちらの記事もあわせてご覧ください:
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Photo by Amy Elting on Unsplash

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