海洋だけではない。プラスチックは土壌も汚染

2022 / 3 / 25 | カテゴリー: | 執筆者:Yasuko Sato

海洋プラスチックは世界的な関心を集めていますが、プラスチックで汚染されているのはもちろん海だけではありません。国連環境計画(UNEP)と国連食糧農業機関(FAO)によれば、農地土壌には海洋よりも多くのマイクロプラスチックが存在する可能性があります。今回はUNEPとFAOのレポートから、特に農地の土壌プラスチックについて考えてみます。

農業に欠かせないプラスチック

農業におけるプラスチック製品の使用はここ数十年で大幅に増加しました。中でも、マルチング(土の表面を覆うプラスチックフィルム)は、雑草を抑える、地温を上げる、水の蒸発を防ぐなど様々な利点があり、生産性の向上に役立っています。一方、こうしたフィルムをはじめとする使い捨てプラスチックは、計画的に回収・管理されていないため、マイクロプラスチックとなり土壌に蓄積されてしまっています。

私の地元にある里山の耕作放棄地もまさにその通りで、マルチングだったと思われる薄いプラスチックがボロボロになって土に混ざりこみ、既に回収は不可能な状態です。こうした状況は、日本のあちらこちらにあるのではないかと想像します。

環境、人体、食料安全保障への影響

UNEPの報告書は、土壌プラスチックが人体や環境、食料安全保障に影響を与えると指摘しています。マイクロプラスチックは食物連鎖により濃縮され、ヒトや生態系に影響を与える可能性があります。マイクロプラスチックは農薬のような汚染物質を吸着する性質があるため、こうした有害物質が自然界や体内に入るリスクもあります。また、農産物の生産性や、安全な水の確保にも影響し、SDGs(特にゴール1:貧困、ゴール2:飢餓、ゴール6:安全な水)の達成にも関わると指摘されています。

私たちにできること

技術的な解決策の模索も必要ですが、それよりもまず、「気候に合った作物を育てること」だとFAOパートナーのGRID-Arendal(ノルウェーの非営利組織)の専門家は述べています。私たちがその土地の気候に合ったものを選んで食べることが、問題解決の小さなひとしずくになるのかもしれません。

FAOとUNEPはこの先、農業用プラスチックに関する報告書を出していく予定です。未知の部分も多い土壌プラスチック問題ですが、海洋プラスチックと同様、問題意識が高まるにつれて個人や組織の対策が求められるようになると推測します。個人的にも身近な問題として、理解を深めていきたいと思います。

Photo by Barmalini via Atobe Stock

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