豪州の現代奴隷法 企業の取り組みに変化は?

2022 / 2 / 28 | 執筆者:山本 香 Kaori Yamamoto


2018年に成立した豪州の現代奴隷法(Modern Slavery Act)。

企業による同法への対応を調査するため、研究者や市民団体などが共同で進めるプロジェクトの報告書『Paper Promises? Evaluating the early impact of Australia’s Modern Slavery Act』が公表されました。

施行から3年、進捗状況は?

今回の報告では、現代奴隷に関する声明を公表している企業102社を対象に、リスクが高いとされている「中国産の繊維・衣服」、「マレーシア産ゴム手袋」、「豪州産園芸作物」、「タイ産海産物」の4つのセクターに注目して、以下の観点で調査した結果がまとめられています。

①現代奴隷法が定める報告基準を満たしているか
②現代奴隷リスクの特定・開示ができているか
③リスクに対して実効的な措置を取れているか

報告書によると、①すべての報告基準を満たしていた企業はわずか23%、②リスクの特定や開示が十分な企業は半数以下、③現代奴隷リスクに対して具体的な対応をしている企業はわずか27%で、同法への対応が不十分な現状を次の一文で伝えています。

Many company statements remain mere “paper promises” with little evidence of effective action in the areas most likely to improve conditions for workers.
(試訳)多くの企業の声明は依然として「紙の約束」に過ぎず、労働者のための条件改善に向けた余地が最も大きい領域において実効的な措置を取っていることの証拠はほとんど確認されなかった。

「すぐに破られてしまう、うわべだけの約束」という意味の”paper promises”という表現が目を引きます。残念ながら、現代奴隷法の施行から3年が経った現時点では、まだ企業の具体的な行動を変えるところまでは至っていないようです。

企業に求められるengagement

こうした現状を踏まえて報告書は、企業に対して「現代奴隷リスク特定のための人権デューデリジェンスの実施」、「労働者中心のアプローチの実現」、「責任ある調達慣行の実践」、「実効性のある是正プロセスの実施」を提言しています。

この4つの提言から、engagementが大事なキーワードであることが見えてきます。
例えば、労働者中心のアプローチを実現するためには労働者や労働組合との真のエンゲージメントが必要になります。実効性のある是正措置を実施するには、当事者とのエンゲージメントを通じて、どのような被害を受けたのか、どのような補償を必要としているのかを把握しなければなりません。

engagementとはつまり「相手をしっかり理解しようとする姿勢」。現代奴隷の問題に本気で取り組むため、企業にはまず労働者と誠心誠意向き合うことが求められます。

今回の報告書は、2年にわたるプロジェクトの最初の1年の調査結果をまとめたものです。来年の最終報告では、同現代奴隷法が企業の具体的な行動につながっていることが期待されます。

Photo by Pezibear via Pixabay

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