進む「脱○○」 その背景にあるものとは

2022 / 1 / 26 | カテゴリー: | 執筆者:山本 香 Kaori Yamamoto


昨年のCOP26でも議論の中心となった脱炭素(decarbonization)。
脱炭素社会に向けて化石燃料への投資から手を引くダイベストメント(divestment)。
近年注目を集めている脱成長(degrowth)という考え方。

これらの英語表現に共通するのは、否定や脱却を意味する接頭辞de-/diです。

「deleverage=レバレッジ解消」で変わるお金の流れ

先日、ある企業の統合報告書の中でdeleverageという表現が目に留まりました。「レバレッジをかける」という意味のleverageに接頭辞de-が付いています。leverageは「てこ」という意味の英語表現ですが、金融業界では借り入れをして投資をし、リターンによって自己資金を増やすことを指します。それに、de-を付けることで逆の意味になります。つまり、deleverageとは「借り入れしていた資金を返却し、投資を止める」ことを意味します。

前出の企業の報告書には、顧客価値創造のための戦略の一環として企業買収や事業売却などを進める中で、レバレッジ解消も行っていることが書かれていました。de-/di-で始まる表現に注目すると、これまでの株主至上主義からマルチステークホルダー指向に移行していく大きな流れとともに、お金の動きや当たり前とされてきた前提も変わりつつあることが読み取れます。

資本主義の見直しとともに進む「脱○○」

資本主義のもと、企業の大半はこれまで利潤の追求を最優先して事業を行ってきました。しかしその結果、環境が破壊され、格差が拡大し、人権が侵害されるといった多くの問題が明らかになったことで、いま改めて社会において自社が担う役割、パーパスを見直す動きが企業の間で広まっています。そうした動きに呼応するように進むさまざまな「脱○○」。

これまでと逆の動きを表すde-/di-で始まる表現は、大きな転換点の前触れを示している可能性があります。引き続き、しっかりとアンテナを張って注目していく必要がありそうです。

Photo by Sharon McCutcheon via Unsplash

こちらの記事もあわせてご覧ください:
脱炭素と生物多様性、統合に向けた動きは金融界にも
「経済成長なき成長」EEA報告
化石燃料からの“ダイベストメント”とは?
低炭素社会から脱炭素社会へ

このエントリーをはてなブックマークに追加