Anxiety and power 子どもたちの今

2022 / 1 / 26 | カテゴリー: | 執筆者:Yukiko Mizuno

毎年、主な英語辞書サイトで発表されるWord of the Year(今年の言葉)。このブログでも、過去に何度か取り上げてきました。今回は、英オックスフォード大学出版局が選ぶ、イギリスとオーストラリアの子供版Children’s Word of the Year 2021に着目し、子どもたちの今を考えます。

不安な思い

イギリスの子どもたちの「2021年 今年の言葉」はanxiety(心配、不安)でした。この言葉の使用頻度は、2012年から2020年にかけて3倍に増えています。以前は冒険的な行動や自然災害に関する文脈で用いられることが多かったのですが、最近はコロナ禍での困難や学校閉鎖、隔離などへの思いを表すのに使われています。

大人でも不安な状況が続くなか、発表サイトの以下の文章が心に残りました。

Language is key to self-expression, learning and wellbeing. It is a positive sign that children are comfortable and confident about sharing their feelings in the classroom – that they feel it is OK to express anxiety.
言葉は、自己表現、学び、心の健康にとって極めて重要です。教室で、子どもたちが安心して自信を持って自分の気持ちを表せること、「不安な気持ちを隠さなくていいんだ」と思えることは、好ましい兆候です。(仮訳)

未来へ進む力

オーストラリアの子どもたちの「2021年 今年の言葉」はpower(力、パワー)。この言葉の使用頻度は、前年から61.8%増えました。powerは空想的な物語のなかでの使用も多く、コロナ禍にあって現実逃避できる物語が子どもたちの支えになる面もあったのかもしれない、とオックスフォード大学出版局は指摘しています。また、powerという言葉にはロックダウンなどの制約の後に自由を満喫したいという思いも反映されていると分析しています。ほかにもいろいろな文脈や意味合いでpowerが使われていましたが、子どもたちが書く文章には、しっかりと前を向く気持ちが表れているものがたくさんありました。

イギリス版の分析結果をとりまとめた報告書には、以下のメッセージが記載されています。

Everybody feels anxious, we will have challenging situations, but we can build resilience for our wellbeing, to deal with those challenges and keep safe and well.
誰でも不安になるし、困難な状況に陥ることもある。でも私たちは、立ち直る力を身につけることができる――幸せになるために、困難に立ち向かうために、安全で健康でいるために。(仮訳)

国や調査方法の違いはあるものの(注)、anxietyもpowerも、今を生きる子どもたちの心を表していると思います。不安な気持ちを否定せずに受け止めたうえで、未来に向かうエネルギーを蓄え、力強く進んでほしいと願います。

(注)オーストラリアの「2021年 今年の言葉」は、子どもたちの作文を分析して選んだものです。イギリスでも例年は作文コンテストに応募された文章を分析して言葉を選んでいますが、2021年の言葉は、新型コロナウイルスが子どもの教育と健康に与える影響を分析することを念頭に学校で行われた調査が基になっています。

Photo by Robert Collins on Unsplash

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