国際的な議論の場における「意味ある参加」の重要性

2021 / 12 / 24 | 執筆者:山本 香 Kaori Yamamoto


「参加」を意味するparticipationという英語。
人権が関係する国際的な議論の場を中心に、meaningfuleffectiveで形容されるケースをよく目にします。その背景には何があるのでしょうか?

ミシェル・バチェレ氏の発言の真意

調べてみると、国連人権高等弁務官のミシェル・バチェレ氏の発言にヒントがありそうなことが分かりました。一例をご紹介します。

【2021年11月16日、COP26サイドイベントでのスピーチより抜粋】

But more needs to be done to ensure that participation is treated as the fundamental human right that it is – not an empty promise that can be shelved when it’s inconvenient. Participation must be meaningful, informed and effective.
(試訳)しかし、不都合な場合に棚上げされてしまうような空約束ではなく、基本的人権として参加する権利が認識されるようになるには、まだまだやるべきことがあります。「参加」は、意味のある情報に基づいた効果的なものでなければなりません。

スピーチが行われたCOP26に先立ち、今年10月、国連人権理事会は「清潔で健康的かつ持続可能な環境を持つことは人権である」と認める決議を採択しました

世界では気候変動による環境の変化で住む土地を追われる「環境難民」が現実のものとなっています。気候変動はまた、異常気象や干ばつなどの災害も引き起こし、多くの人が生存権や食料・水を得る権利などまさに人権を脅かされています。COVID-19のパンデミックも、環境問題によって人権が脅かされた分かりやすい一例でしょう。

今後さらに深刻化することが予想されるこうした気候危機に備える上で、すでに影響を受けている島嶼国の人々、先住民族、若者、市民社会などさまざまな人が議論の場に参加し、その声に耳を傾けることが緊急に求められています。つまり、そうした多様な人々に必要な情報を共有し、議論の場での発言を意思決定に反映させることが本当の意味での「参加」であり、世界全体の未来を考える上で、そのような「参加」がいかに重要であるかをバチェレ氏は上記のスピーチで強調しているのです。

当然の義務であり、資産でもある

同氏はまた、2020年9月25日の国連総会サイドイベントでのスピーチでも次のように述べています。

Protecting and respecting the right to participation is a legal obligation for every Member State. But it is also a major asset to governments, even if not always recognized as such.
(試訳)参加権の保護と尊重は、すべての国連加盟国が果たすべき法的義務です。一方政府にとっては、かならずしもそう認識されていないとしても、大きな資産の一つでもあります。

当然果たすべき「義務」であると同時に、「資産」でもあるという考え方が新鮮です。さまざまな人が意思決定に参加することで、課題が浮き彫りになり不公平の解消につながりやすい、多様なコミュニティと信頼関係を築けるなど、実は意見を聞く側にとってもいろいろなメリットがあるとバチェレ氏は説明しています。

気候正義や「誰も置き去りにしない」世界を実現するには、まずはこれまでのやり方を改める必要があります。具体的には、真っ先に気候危機に直面しているにもかかわらず、これまで不公平にも発言の機会を与えられなかった人たちの声に耳を傾け、その声を行動に変えていくこと。

そもそも「参加」(participation)とは、本来「声がしっかり届く状態」を意味するはずです。「意味ある参加」(meaningful participation)のように、形容詞を付ける必要がなくなる日が少しでも早く来てほしいと思います。

こちらの記事もあわせてご覧ください:
コロナ禍対応の中心に人権を
先住民族の土地問題-人権観点からのフィージビリティスタディの必要性
新たな自然災害 晴天の洪水 Sunny-day flooding

Photo by Clem Onojeghuo via Unsplash

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