気候の言葉の今 危機感と変化

2021 / 11 / 25 | 執筆者:Yukiko Mizuno

Oxford English Dictionary(OED)では、2021年10月に気候変動と環境のサステナビリティに関する言葉を中心とする改訂が行われました。そのまとめ記事を読むと、この分野の言葉にまつわる最近の変化と、その背景にある社会や人々の意識が読み取れます。

強まる危機感

近年の傾向として目を引くのは、気候変動に関する用語が強い危機感を示すものに代わってきていることです(こちらのブログ記事もご参照ください)。OEDの分析によると、more emotive language(より感情に訴える言葉や表現)が使われる頻度が著しく増えています。Climate changeやGlobal warming(気候変動、地球温暖化)よりも強い危機感を表す言葉として、使用頻度が増えているのがClimate emergencyClimate crisisGlobal heating(気候の非常事態、気候危機、地球酷暑化)など。これらの言葉は、いずれも今回の改訂で追加されました(注)。

変化する意識

危機感が強まる一方で、何とかしなければいけない、この現状を変えていこう、という意識も、言葉の使われ方から読み取れます。たとえば、今回の改訂で追加されたvertical farming(垂直農法)、urban agriculture(都市農業)は、従来型農業の環境影響に対する意識から生まれた、別のかたちの農業を表すものです。再生可能エネルギーに関連するwind parksolar parkmicrogridなども、今回の改訂で取り上げられています。

COP26で大きな争点となったFossil fuel(化石燃料)についても、OEDは興味深い分析をしています。この言葉は、近年、divestmenttransitionphasing outなどの「脱する」、「離れていく」というニュアンスの言葉と一緒に使われる例が非常に多くなっているのです。

もうひとつ注目したいのがkaitiakitanga。これはニュージーランドの先住民族マオリの言葉で、環境の守り手としての人間の責任(the human duty of environmental stewardship)を意味します。ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は、2018年9月にニューヨークで開催された気候変動週間の開会演説で、気候変動への取り組みにおいて鍵となる考え方としてこの言葉を引用しました。気候変動という地球規模の問題と対するとき、環境の守り手としての私たちの責任も国境を越えるものであり、各国が協力して取り組まなければならない、と訴えたのです。気候関連の言葉は西洋科学を起源とするものが多く、kaitiakitangaのような「外来語(loanword)」は珍しいといいます。しかし、こうした多様な価値観を取り入れることは気候変動に関する情報を伝える上で重要だと、OEDは指摘しています。

言葉は時代の空気を表します。今後の改訂では、より強く「行動」が感じ取れる言葉や表現が増えていくことを期待します。

(注)改訂には、新語としての追加、副見出し語としての追加、語義の追加などが含まれます。

Photo by Mika Baumeister on Unsplash

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