UNEPの排出ギャップ報告書に学ぶ 緊急性を伝える表現

2021 / 10 / 28 | 執筆者:立山 美南海 Minami Tateyama

国連環境計画(UNEP)は10月に、今年で12回目となる「排出ギャップ報告書2021(Emissions Gap Report 2021)」を発表しました。8月に発表されたIPCCのレポートに続き、同報告書も、現状のままでは1.5℃を超える温暖化は避けられないと警告しています。

ギャップ報告書では、各国の最新のNDC(Nationally Determined Contributions=自国の排出量削減目標)をもとに、実現されうる排出削減量と気温上昇のレベルが分析されています。分析の結果、最新(2021年8月末までに発表されたもの)のNDCに加え、各国が公式に発表した2030年までのGHG削減目標が完全に実行されたとしても、今世紀末までに産業革命前との比較で2.7℃の気温上昇が見込まれると結論付けられました。

「緊急性」を伝える表現

1.5℃どころか2℃目標の達成すら危うい未来を前に、同報告書は、具体的なデータとともに力強い表現を用いて、各国に迅速な対応を求めています。

表紙には、2021年版のタイトルである「The Heat Is On」の文字。「いよいよ正念場だ」という意味の慣用句でプレッシャーをかけると同時に、真っ赤な色とHeat(熱)という言葉によって深刻な温暖化を表していると考えられます。

冒頭にあるUNEPのインガー・アンダーセン事務局長のメッセージは、”Climate change is no longer a future problem.(仮訳:気候変動はもはや未来の問題ではない)”から始まり、緊急性を表す言葉が随所に散りばめられています。

例えば、1.5℃目標を達成するには、2030年までに、各国が目標とする排出削減量よりもさらに28ギガトン(CO2換算)の削減が必要とした上で以下のように述べています。

The clock is ticking loudly.
(仮訳:時計は大きな音をたてて時を刻んでいる)

「残された時間は少ない」という具体的なイメージを読み手の頭の中に描かせるような、効果的な表現です。

また最後は、以下のような文で締めくくっています。

The world has to wake up to the imminent peril we face as a species.
(仮訳:世界は、私たち人類の目前に迫った危機に対し、目を覚まさなければならない)

perilという言葉自体にも「緊急」のニュアンスがありますが、そこにさらにimminent(差し迫った)を付けることで、時間的に余裕のない切羽詰まった状況を鮮明に表しています。

緊急性を理解し、行動する

1.5℃目標の成否を分けるタイムリミットが迫る中、私たちはこうした緊急性を頭で理解するだけでなく、具体的な実行に移していく必要があります。

翻訳者として、上記のような効果的な表現を用いることで、行動を促すご支援をしていきたいと考えています。

Photo by Markus Spiske via Unsplash

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