新しい気候変動の緩和策 ”proforestation”

2021 / 10 / 26 | 執筆者:EcoNetworks Editor

英単語には、「接頭辞」(prefix。「接頭語」とも)というものがあります。語の前に付けて意味を加えるものです。漢字でいう「ごんべん」や「にんべん」といった「偏」のようなイメージです。主だった接頭辞は新潟大学の『全学英語ハンドブック』にまとめられており、私も過去に語学学校の「接頭辞」の授業でひたすら覚えた経験があります。印象深かったところでいうと、exitという短い単語も、実はex-(「外へ」という意味の接頭辞)が-it(「行く」の意味)にくっついてできています。

 接頭辞(re-、ad-)と植林(forestation)

そんな昔話を思い出したのは、植林関係の言葉が、接頭辞の見本市のようだからです。

基本の「植林」は ”forestation”です。それに接頭辞re-(「再び」の意味)が付いた ”reforestation”は、もともと森林だったのに破壊されていた場所を、また森林に戻す「再植林」。ad-(「に向かって」の意味。fから始まる語に付くときはaf-に変化。)が付いた ”afforestation”は、もともと森林ではなかった場所を森林へと変える「新規植林」を意味します。2001年の「マラケシュ合意」から登場しました。

proforestationという新しい言葉

最近これらに加え、proforestationという言葉が出てきました。pro-は、「支持」の意味です。2019年頃から米タフツ大学のウィリアム・ムーマウ名誉教授が提唱しており、彼自身がYouTubeのインタビューで次のように説明しています。

Because forestation means to grow forests and so proforestation is in favor of growing forests.
(試訳)forestationは森林を育てることですから、proforestationは森林が育つのを支持することを意味します。

forestationを植林した森を育てる視点でとらえ、proforestationは特に手つかずの森林をそのまま成長させ続けることを表しています。同じインタビューの中で ”let trees grow”(木が育つようにする)とも説明されていました。

以前は、植林されて成長著しい若い木の方が、老齢の木よりも、成長の過程でたくさんの二酸化炭素を吸収するから気候変動対策に良いんだと言われていました。しかし、例えば2014年1月に「ネイチャー」誌に掲載された論文 “Rate of tree carbon accumulation increases continuously with tree size”高木の炭素蓄積速度は木のサイズとともに連続的に上昇する)のように、木が成長すれば成長するほど、炭素吸収量がどんどん増えていくことがわかったのです。よって、植林活動以上に、そもそも原生林をそのまま残すことのほうが、生物多様性の保全だけでなく気候変動の緩和策としても非常に重要だとわかってきました。特にアマゾンや、パルプのための針葉樹の伐採が問題になっています。

これに該当する和訳語はまだ見あたりません。やることは「森林保全」と重なるのですが、気候変動対策として積極的に取り入れるべき新しい概念であることを伝えるために、当面「プロフォレステーション」としておくことになりそうです。

(五頭美知/翻訳者)

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