カーボン・ニュートラルとネット・ゼロ その違いと目指すべき方向性

2021 / 9 / 26 | 執筆者:EcoNetworks Editor

 

Carbon neutral(カーボン・ニュートラル)とNet-zero(ネット・ゼロ)。いずれも、温室効果ガス(GHG)の排出量と吸収量を均衡させて、排出量を実質ゼロにすることを指します。一般的には、この2つの用語は同じ文脈で使用され、言い換え可能と認識されていますが、厳密には同じではありません。今日はその違いを見ていきたいと思います。

Carbon neutralとNet-zeroの定義

Carbon neutralについては、英国規格協会(BSI)によるPAS 2060という国際規格があります。Net-zeroは、IPCCが明確な定義を提示しています。また、SBTiが規格を策定中で、COP26に先駆けて10月下旬に発行される予定です。

2つの定義の違いを簡潔にまとめてみます。

Carbon neutral

1.必須対象はGHGプロトコルにおけるScope 1とScope 2。(注)
2.パリ協定の1.5℃目標の達成に沿ったものでなくてもよい。
(つまり、取り組みはできる範囲でゆっくりでも構わない。)
3.GHGの削減や吸収活動によってオフセットする。

Net-zero

1.必須対象はGHGプロトコルにおけるScope 1、Scope 2、Scope 3。
(つまり、製品・サービスに加え、サプライヤーや消費者による排出量も含まれる。)
2.パリ協定の1.5℃目標の達成に整合する排出量削減が求められる。
3.物理的に大気中からGHGを永久に取り除くことでオフセットする。

Net-zeroの視点は1.5℃目標達成に欠かせない

3番の「オフセットの考え方」については、Carbon neutralでは、例えば太陽光発電によりCO2排出量を減らした場合でも、オフセットの対象となります。一方、Net-zeroでは植林(その後100年間はそのままにしておく)や、炭素の回収・貯留といった実際に大気中のGHGを取り除く活動によるオフセットでなければなりません。今後は、Net zeroを実現できる、より効果的なオフセットを考える必要があります。

Net-zeroはCarbon neutralより一段進んだ取り組みです。この2つは英語でも未だ混同して使用されている状況ですが、日本語でも正確な定義の定着は欠かせません。Carbon neutralからNet-zeroへ、世界共通の認識に基づく取り組みが着実に進んでいくよう、言語の側面から支援していきます。

注:
Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3 : Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

(翻訳者、翻訳コーディネーター/ Yasuko Sato)

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Photo by Eyoel Kahssay on Unsplash

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