目を引く表現で、見出しにメリハリを効かせる


元米国副大統領アル・ゴア氏が会長を務める投資会社Generation Investment Managementによるサステナビリティ関連の動きをまとめた年次報告書の最新版が公開されました。

図表がシンプルで視覚的に分かりやすいのに加え、各見出しの文には印象的な表現が多く見られます。

たとえば、ESG関連の動きをまとめたパートの見出しはこちら。

This has been a banner year for ESG
(試訳)ESGが急成長を遂げた一年

「当たり年」という意味のbanner yearが目を引きます。ESGの関連指標が2020年に急激な伸びを示したことを表す象徴的な表現です。

次に、温室効果ガス排出削減の取り組みの現状を伝えるパートの見出しです。

As COP26 approaches, there is a yawning gap between long-term goals and near-term plans
(試訳)COP26を控えた今、長期目標と短期計画の間に大きな隔たりがある

日本政府も2050年までにCO2排出実質ゼロの達成を掲げているように、さまざまな国が排出削減の新たなコミットメントを表明しています。しかし、そうした短期的な計画と「1.5℃目標」など長期目標に向けた道筋には大きな隔たりがあるということを報告書は明らかにしています。
現状の「隔たり」を、bigやhugeという聞き慣れた表現ではなくyawningと形容することで、目標にはいまだほど遠く、まだまだやるべきことが残っているという危機感がより伝わります。

最後に、サステナビリティの盛り上がりをパンデミックからの復興につなげていこうと総括しているパートの見出しをご紹介します。

Sustainability is the lodestar for the post-COVID-19 recovery
(試訳)サステナビリティは、COVIDからの復興における指針である

「北極星」を意味するlodestarが印象的です。北極星は、いつも変わらずそこにあって、道に迷ったときに進むべき方向を示してくれる星。より良い社会への復興を目指して進む中では、サステナビリティこそ迷ったときに立ち返る基準であるということがイメージしやすい表現だと思いました。

翻訳では、情報を漏れなく正確に伝えることが大前提ですが、ときに強く印象に残る表現をうまく取り入れてメリハリをつけられれば、より効果的に読み手に届けることができます。

実際の業務でも、翻訳チームでいいアイデアが生まれれば、お客様にご相談しながら積極的にご提案していきたいと思います。

Photo by Wokandapix via Pixabay

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