Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
食べ物から見る気候変動対策
前回のブログ記事で、書籍『ドローダウン――地球温暖化を逆転させる100の方法』(”Drawdown: The Most Comprehensive Plan Ever Proposed to Reverse Global Warming”)に示された効果的な温暖化対策についてご紹介しました。その中で書ききれなかったのが、食品分野です。
食料は気候対策の重要分野
温室効果ガスの削減量でトップ10に入った対策の中に、食料の生産者側の対策として「シルボパスチャー(林間放牧)」と「環境再生型農業」のほか、消費者も絡むものとして、「食料廃棄の削減」が3位、「植物性食品を中心にした食生活」が4位と上位に入っています。
食料廃棄については、「食品ロス」あるいはカタカナで「フードロス」という言葉で、メディアに取り上げられることも増えてきました。東京オリンピック関連でのニュースを見た方も多いでしょう。環境問題としても、またコロナ禍で苦しい思いをしている人も多い中での社会問題としても、やるせない一件でした。食品ロスを減らすには、「消費者が買いすぎない」だけでなく、食品産業や政策におけるフードチェーンの中での対策が大切です。
Less Meat 植物性たんぱく質食品に切り替える
もう一つの「植物性食品を中心にした食生活」は、いわゆるベジタリアン食に変えることです。なぜかというと、牛のゲップに含まれるメタンが強力な温室効果ガスであることが一つ。それに加え、飼料の栽培にも資源が必要で、また、排泄物の処理も必要となるからです。さらに、動物性たんぱく質の摂りすぎが人々の病気の原因にもなっています。
現実問題としてすぐにベジタリアンになるのはなかなか難しいのですが、本書でも紹介されている「リデュースタリアン」(Reducetarian/肉食減量主義)は、私も意識しています。家族もいるので無理のない範囲で、納豆や豆腐の植物性たんぱく質に、じゃが芋やさつま芋の人気メニューを組み合わせて満腹感や満足感を得られるようにした食事を、意識的に時々用意しています。「大豆ミート」など、植物性たんぱく質食品に「肉」や「ミート」の名称を使うことも最近消費者庁で認められ、追い風になっています(ただし、それとわかるように表示すること)。お料理の得意な方々には、是非、新しいレシピづくりに挑戦していただきたいと思います。
(五頭美知/翻訳者)
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