影の経済 広がるinformality

2021 / 7 / 27 | 執筆者:山本 香 Kaori Yamamoto

新型コロナウイルス感染症からの復興に向けて世界が少しずつ動き出そうとしている中、世界銀行が今年5月に発表した報告書『The Long Shadow of Informality』(インフォーマル性が落とす長い影)は、インフォーマル経済が抱える課題への対処が急務だと訴えています。

ILOの定義によると、インフォーマル経済とは「法または実務上、公式の取り決めの対象となっていないか、公式の取り決めが十分に適用されていない労働者及び経済単位の行うあらゆる経済活動(不正な活動は含まない)」。経済活動として公式に記録されないため、「影の経済(shadow economy)」と呼ばれることもあります。

前出の報告書は、新興国や途上国では労働者の70%以上がインフォーマルセクターで働いており、失業や収入減に直面しても社会のセーフティネットに頼ることができないために、コロナ危機で深刻な打撃を受けていると伝えています。

また、国連薬物犯罪事務所(UNODC)の人身取引に関する最新の報告書には、過去15年で主に強制労働させる目的で取引される男の子の数が5倍に増えたとあります。そうした子どもたちの大半がインフォーマル労働者として働かされることになります。

当初は一時的な現象と捉えられていたインフォーマルな経済のあり方(informality)が、時代とともにそうではなくなり、さらに拡大している現状がうかがえます。同時に、貧困や人身取引との関連など、informalityの負の側面が顕著になってきている点は強く懸念されます。

世界銀行のこちらのブログは、そのような現状をデータで分かりやすく示した上で、問題解決の難しさについても触れています。
その中の一文がこの問題の性質を的確に表現しています:

For some people, working in the informal sector is a choice. For others, it is a last resort.
(試訳)一部の人にとって、インフォーマルセクターで働くことは選択肢の一つである。だが他の人にとっては、最後のよりどころなのだ。

対処すべきは、インフォーマル経済で働く以外に生きる道のない人たちです。たとえば、児童労働に従事する子どもたちは、多くの場合、今の環境から抜け出すために不可欠な教育を受ける機会も奪われてしまいます。

そして、忘れてはいけないのは、サプライチェーンが世界中に張り巡らされている今日、私たちの何気ない暮らしもそういう労働に支えられているということ。私たちの暮らし、つまり今の経済のあり方が、児童労働や強制労働を誰かにとっての「最後のよりどころ」とさせているのであれば、グローバル社会全体が抱える深刻な問題として今すぐ手を打たなければなりません。

Photo by Rapheal Nathaniel via Pixabay

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