いま、求められる力 UNEP海洋プラ解決策提言から

2021 / 7 / 27 | カテゴリー: | 執筆者:Yukiko Mizuno

2019年のG20大阪サミットで提案された「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」。海洋プラスチックごみによる新たな汚染を2050年までにゼロにすることを目指すこのビジョンは、87の国と地域に共有されています(環境省HP、2021年5月時点)。今月、このビジョンの実現に向けてとりうる政策をまとめた文書が発表されました。G20からの委託を受け、国連環境計画(UNEP)が作成したものです。

この文書で目を引いたのは、以下の三つのシナリオです。

2040年までに、

  • ・何の対策も講じなければ、プラスチックごみの量は2倍に、海に流出するプラスチックの量はほぼ3倍に、海の中のプラスチックの量は4倍になる。
  • ・各国政府や企業が現在約束している取り組みを実行したとしても、海に流出するプラスチックは、何の対策も講じなかった場合に比べてわずか7%しか減らせない。
  • ・生産から消費、廃棄に至るプラスチックのシステム全体の、さまざまな段階への介入を、同時に(concurrently)、意欲的に(ambitiously)、世界全体で(globally)、いますぐに始めれば(beginning immediately)、海に流出するプラスチックを、何の対策も講じなかった場合に比べて82%削減できる。

上記の根拠となっているのが、2020年に発表された『Breaking the Plastic Waveプラスチックの波を止める)』という報告書です。同報告書は、プラスチック汚染に対処できていないのは技術的な解決策がないからではなく、規制の枠組みやビジネスモデル、資金メカニズムの不備が問題なのだと指摘します。さらに、プラスチック汚染を大幅に削減するには、プラスチックが消費者の手に届く前の「上流」部門と、消費後の「下流」部門を分けて考えるのではなく、両方とも同時に対処する必要があると言及しています。

多くの国や企業、社会が複雑に関わり合うプラスチックのライフサイクル(システム)。ひとつひとつの問題を、それぞれ別個に解決しようとしていたのでは、効果が限られてしまいます。システムが全体としてより良く機能するようにするためには、システム全体を俯瞰し、どこをどう改善すべきかを見極めて、「同時に、意欲的に、いますぐに」対策をとることが重要なのです。

これはプラスチック問題に限らず、ほかの課題にも役立つ視点です。物事を広い視野で捉え、全体としてうまく機能するように工夫すること。簡単ではありませんが、個人にも、社会にも、そうした力がいっそう求められる時代なのかもしれません。

Photo by Naja Bertolt Jensen on Unsplash

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