ダイバーシティのrepresentation、どう訳す?

2021 / 6 / 29 | 執筆者:山本 香 Kaori Yamamoto


米ニューヨークタイムズのこちらの記事は、会社役員のダイバーシティに関する複数の調査結果を紹介し、最近の傾向や今後の見通しをまとめています。
Fortune 100やFortune 500の企業を対象に毎年行われている調査では、依然として会社役員の大半を白人男性が占めている現状が明らかになった一方、昨年から今年のデータに基づいた最新の別の調査では、S&P 500の企業でアフリカ系アメリカ人の役員の数が200%近く増えたことが分かり、昨年夏に全米各地に広がった人種差別に対する抗議運動が背景にあると考察されています。

この記事では、representationという言い回しが何度か使われています。日本語に訳しにくく翻訳者泣かせの英語ですが、ダイバーシティの文脈ではどのような意味でどのような使われ方をしているのでしょうか。

まとめの段落にある一文をご紹介します:
… it would take decades for boardrooms to reach representation proportional to the demographics of the American population.
【試訳1】会社役員において、米国の人口構成に釣り合うrepresentationに達するには、何十年もかかるだろう。

やはり一対一で日本語に置き換えるのは難しいので、いったんこのままにして定義を確認してみましょう。

いくつかの辞書を引いたなかで、Collinsの次の定義が当てはまりそうです:
If a group of people or things is well represented in a particular activity or in a particular place, a lot of them can be found there.

well representedの形で「人や物の特定のまとまりから多くが参加している」というような意味になる、とあります。
上記記事の文脈で考えると、たとえば、アフリカ系、ヒスパニック系、アジア系、白人、さらには男性、女性とグループ分けをした場合、それぞれのグループからどのくらいの人数が「会社役員」という立場に参加しているか。その人数が多ければwell representedと言い表すことができそうです。

そのイメージに基づいて、前述の一文を思い切って次のように訳すこともできそうです:
【試訳2】会社役員の多様性が米国の人口構成に釣り合うようになるまでには、何十年もかかるだろう。

今回のrepresentationのように、ピッタリと同じ意味を伝える訳語がない、ということは翻訳ではめずらしくありません。そういう場合は、文章全体で何を伝えようとしているかをまず把握して、ターゲット言語でゼロから表現し直そうとしてみると道が開けるかもしれません。

Photo by suju-foto via Pixabay

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