Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
企業のオープンな情報開示 ユニリーバのレポートから
今年に入り、ユニリーバのサステナビリティ・サイト(英語版)がリニューアルされました。2010年に導入された「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン(USLP)」が、2020年に完了し、今年から新しい戦略へ移行したのと同時に、ウェブサイトも新しくなったようです。
そこで、これまでの中期計画の総括と、次の中期計画の情報をどのようにまとめているのかを見てみました。
ユニリーバは、サステナビリティレポートをPDFのような形では作成せず、ウェブサイトでの情報開示のみとなっています。
新しいサイトは、今年から始まる新しい中期目標(Climate actionを始めとする10項目)に合わせて構成されています。各項目をクリックすると、その中に「Strategy and goals」があり、新しい中期目標の詳細が記載されています。
一方、USLPの10年間の総括はこちらのサイトのRelated Linksにある「10 Years of Sustainable Living」(PDF)にまとめられています。このPDFでは、インフォグラフィックを使って、全ての目標の達成率が一目でわかるようになっています(P4参照)。
ここで驚いたのは、Waterの項目の目標「消費者が商品を使う際の水の使用量を2020年までに半分にする(試訳)」の達成率が「0%」、つまり全く達成できなかったとなっていることです。0%となった背景については、後ろのページ(P18)に「2010年より水を多く使用する製品が増え、取り組みの進展が相殺されてしまった」旨が記載されています。
もう一つ印象深かったのが、Key learningsのページです(P5参照)。上手くいかなかった点を振り返り、そこから得た学びが記されています。
We underestimated how challenging it would be to help the majority of consumers change their behaviours to embrace more sustainable ways of living.
より持続可能なライフスタイルを取り入れるよう、多くの消費者に行動変容を促すのがいかに難しいかを過小評価していた。(試訳)
ネガティブな内容を率直に伝えることで、企業の真摯な姿勢が伝わります。こうした発信から 読み手が受け取るメッセージは、必ずしもネガティブなものではないように思います。センシティブな内容を扱う時は使う単語や表現に注意が必要ですが、こうしたオープンなコミュニケーションが進んでいくよう、翻訳の側面から応援していきたいと思います。
(翻訳者、翻訳コーディネーター/ Yasuko Sato)
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