カカオ産業の人権と「アグロフォレストリー」

2021 / 5 / 26 | 執筆者:山本 香 Kaori Yamamoto


チョコレートの原料であるカカオ豆の栽培に関しては、以前から森林破壊などさまざまな問題が指摘されています。特に児童労働をはじめとする人権問題は、今や主要生産地であるアフリカから遠く離れた日本でも広く認識されています。

ところが、シカゴ大学NORC研究所が2020年に発表した報告書は、いまだに156万人もの子どもがカカオ農場で働かされていることを明らかにしました。残念ながら、問題解決に向けた取り組みが十分効果を発揮しているとは言えないようです。

問題の背景には、農家の人々がカカオ栽培で十分な収入を得られていない現実があります。
そこで解決策の一つとして期待されるのが「アグロフォレストリー」です。
「森をつくる農業」や「森林農業」とも呼ばれるこの農法では、さまざまな種類や高さの木を植えて森をつくり、その下の農地で多様な農作物を栽培します。つまり、従来の単一栽培と違い、カカオ以外の農作物や材木なども収穫できるため収入の安定につながると考えられています。

森林伐採も不要で環境にもよいとされるアグロフォレストリーですが、こちらの報告書はなかなか普及しない現状の問題点を指摘しています。なかでも、あらゆるステークホルダーを巻き込んだ全体的な連携が不十分で、例えば農家の人々に向けた研修が十分に行われていなかったり、生活が苦しくて必要な資金をまかなえなかったりと、特に農家の人々が取り残されている状況が根本原因であるように感じられます。

アグロフォレストリーの真の普及と、それによるカカオ産業の人権問題の解決に向けて同報告書がまとめている提言の一部を抜粋してご紹介します:

Costs and benefits are a collective responsibility.
It is key to create a mechanism which commits the entire cocoa sector, thus mobilising the necessary resources and creating a level playing field.
(コストと利益は共有すべき責任である。
カカオ産業全体で取り組む仕組みを作り、必要な資金を集めて公平な環境を生み出すことが重要だ)

太字で示した「連帯」や「共有」を意味するcollectiveと「公平」を意味するlevelは、とりわけ人権問題の解決に欠かせない考え方です。

チョコレートを好んで食べる私自身も、バリューチェーンを構成する一人です。現地で子どもたちや生産者の方々が長年抱えている問題を共有する一員として、各国政府や関連企業のアグロフォレストリー導入等による問題解決に向けた一層の取り組みを期待しつつ、産業全体が公平であるように消費者としても責任ある行動を取りたいと思います。

※英文に続く( )内の和文は試訳です。

Photo by Elias Shariff Falla Mardini by Pixabay

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