More than words 意思表明の先にあるもの


米テクノロジー企業シスコシステムズの2020年版CSRレポートのあるページに、印象的なタイトルを見つけました。

More than words
直訳すると、「言葉以上のことを」。

その真意を探るべく、このタイトルが掲げられた章を見てみると、2020年9月に同社が発表した『Social Justice Beliefs and Actions』という人権方針について、インタビュー形式で紹介されています。読み進めるうちに、タイトルのMore than wordsが表す「言葉以上のこと」とは、つまり、行動(action)であることが見えてきます。

たとえば、人権方針の目的について次のように語られています:

Enabling bold, deliberate, intentional action whenever- and wherever- we see injustice and inequality.

(不公平や不平等があれば、それがいつどこであろうと、大胆かつ慎重で、意図した行動を起こせるようにします)

また、方針の特徴については次のように紹介しています:

One of the things that I am most proud of is how we didn’t simply lay out a list of ideals…We set out an action plan to make ideals reality…

(最も誇るべきは、単に理想を並べ立てるだけでなく・・・理想を現実にするための行動計画を定めている点です)

目指すべきゴールを掲げるとともに、そのための行動に重点を置くことで、本気で状況を変えようとしている決意が伝わり、真実味が生まれます。

同レポートでは他にも、
●to bring our purpose to life(パーパスに命を吹き込むため)
●to tangibly improve(目に見える改善につなげるべく)
など、意思表明で終わらせずに、実際の行動や成果につなげることを重視する姿勢を表す表現が多く見られます。

「言うは易く行うは難し」ということわざもあるように、何事も実行に移すのは難しいものですが、そのことを十分認識した上で、先を見通し、責任を持って発せられた言葉には説得力があります。シスコのレポートを読み込んでみて、表面的な言い回しだけにとらわれない誠実で率直なコミュニケーションの力強さを改めて感じました。言葉を扱う翻訳者としても、一人の人間としても、この学びを自分の行動にも活かしていきたいと思います。

※英文に続く( )内の和文はすべて試訳です。

Photo by Gerd Altmann via Pixabay

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