コロナの影響は公平か?

2021 / 3 / 1 | 執筆者:山本 香 Kaori Yamamoto

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は昨年6月、新型コロナウイルスのパンデミックが社会的に脆弱な人々に及ぼす影響を懸念して次のように警鐘を鳴らしました。

(…the impacts of the COVID-19 pandemic are falling) disproportionately on the most vulnerable: people living in poverty, the working poor, women and children, persons with disabilities, and other marginalized groups.
[試訳:パンデミックの影響は、貧しい人々、ワーキングプア、女性や子ども、障がい者など最も脆弱な人たちに偏って出始めている。]

ここに出てくるmarginalizedという表現。以前、こちらのブログでもご紹介したとおり、「置き去りにされた/取り残された」という意味です。

国連事務総長の発言から半年以上が経過した今、こうした人々は実際にどのような影響を受けているのでしょうか。

米国人女性の働き方への影響に関するこちらの報告は、保育所や学校、介護施設の閉鎖で、家族の世話を引き受けることになった女性が離職したり勤務時間を減らしたりするケースが相次ぎ、このままではジェンダー平等が大きく後退しかねないと警告しています。

また、カナダのトロントで行われた調査では、市の人口の半分を占めるにすぎない黒人をはじめとする有色人種が、新型コロナウイルス感染者の83%を占めていることが分かりました。health inequities(健康の不公平)が存在すると指摘されています。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のこちらの報告書は、難民の雇用、収入、食の安全保障などに壊滅的な影響が出ていることを伝えています。

パンデミックの影響に関するこうした世界各地の状況に照らして、改めて英語表現としてのmarginalizedがどのように使われているかを見てみると、inequities(不公平)、disproportionate(過度な、偏りのある)、exclusion(除外)などが関連ワードとして似たような文脈で頻出することに気づきました。

残念ながら、パンデミックの影響が、いわゆる社会の主流からもともと取り残されていた人々に特に偏っていて、そうした人たちがこれまで以上に生きづらさを抱える結果になっている現状とリンクします。

「誰も置き去りにしない」を掲げるSDGsとも関連のある表現でありながら、目指す方向と逆行していることに悔しさがつのります。排除しようとする力をもう一度逆方向に向かわせるために、国連や各国政府の今まで以上の対応が期待されます。

Photo by Marcos Cola via Pixabay

 

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