世界が直面しているリスク グローバルリスク報告書2021より

2021 / 1 / 25 | カテゴリー: | 執筆者:Yukiko Mizuno

1月19日に、世界経済フォーラムの『The Global Risks Report 2021(グローバルリスク報告書2021年版)』が発表されました。毎年発表され、今年で16冊目となるこの報告書から、注目ポイントをいくつかご紹介します。

影響の大きいリスク(Top risks by impact)

最大のリスクに挙げられたのは「感染症」。報告書の分析の基となるグローバルリスク意識調査(Global Risks Perception Survey)では、今年の回答者の約60%が「感染症」と「生活の苦境」を最大の短期的危機として挙げました。やはり、新型コロナウイルスのパンデミックはリスク意識に大きく影響しています。

若い世代の失望感

パンデミックのために、若い世代は、教育の機会や経済的な見通し、精神的な健康などの面で大きな試練にさらされています。フランスでは、19歳の学生がマクロン大統領に手紙を書いて切実な状況を訴えました。こうした若者の思いは「国際社会ではほとんど注目されていないが、世界的に極めて重要な短期的脅威になるだろう」と報告書では指摘しています。

「起こる可能性が高い」リスク

報告書では、影響の大きいリスク(Top risks by impact)に加えて、起こる可能性が高いリスク(Top risks by likelihood)も分析しています。昨年初めて、起こる可能性が高いリスクのトップ5を環境関連の問題が占めましたが、今年もトップ5のうち4つを占めています(極端な気象事象、気候行動の失敗、人為的な環境損害、生物多様性の損失)。なかでも首位の極端な気象事象(Extreme weather)は、この数年、特に実感として理解できます。

言葉の観点からは、環境問題の危機感を伝える表現が目に留まりました。

– Climate change—to which no one is immune—continues to be a catastrophic risk.

– No vaccine for environmental degradation

気候変動の影響を受けない者はいない、環境悪化を防ぐ魔法の解決策などない、ということを伝えるのに、immune(免疫)vaccine(ワクチン)という言葉が使われています。コロナ禍のなか、こうした医学用語が日常的に使われるようになりました。言葉の意味や使われ方は時代の空気を反映するのだと、改めて気づかされます。

グローバルリスク報告書2021年版では、デジタル・デバイドや社会の分断などのリスクも分析し、コロナ後の世界の産業構造についても言及しています。今、社会が直面しているリスクや、今後想定されるリスクについて理解を深められるだけでなく、過去の報告書と比較することによって、リスクがどのように変化してきたかも知ることができます。じっくりと時間をかけて読み込みたい文書です。

Photo by Jeyaratnam Caniceus via Pixabay

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