Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
RE100のレポートから読み解く、日本の再エネ化の進捗
国際的な環境NPOのThe Climate Group(TGC)が、RE100の2020年版の年次レポートを発行しました。RE100は、企業が使用する電力を100%再生エネルギーにすることを目指すイニシアティブで、日本からも約40社が参加しています。
コロナ禍にもかかわらず、アジア太平洋地域を中心に参加企業は増加しており、2020年12月24日時点では世界全体で284社に上ります(レポートの分析対象は261社)。
レポート全体の中でも特に印象的だったのは、以下の4点でした。
(※以下のデータは、上記レポートで分析対象とされたRE100参加企業のみに関するものです。)
・100%再エネ化を達成した企業は53社(全体の20%)
・総電力消費量に占める再エネの割合は42%(2015年の22%と比べるとほぼ2倍に)
・100%再エネ化の目標年は、平均して2028年
・2030年を目標年とする企業は、全体の75%
上記の数値を見て、驚かれた方も多いのではないでしょうか。上記と同じ内容を、日本のRE100参加企業に絞ってみると、以下のようになります。
・100%再エネ化を達成した企業は1社(城南信用金庫)
・総電力消費量に占める再エネの割合は14%
・100%再エネ化の目標年は、平均して2044年
・2030年を目標年とする企業は、全体の7.7%(3社)
以上から分かるように、日本の再エネ化の取り組みは世界に後れを取っているようです。実際にレポートでも、日本は「challenging market(課題国)」の一つとされています。
何が障壁となっているのでしょうか。日本に関しては、以下の2点が指摘されています。
(1)再エネのコストが高いこと
(2)発電設備の詳細を示す属性情報が付いたエネルギー証書(EAC=Energy Attribute Certificate)が不足しており、RE100に認められる再エネの調達手段と量が限られていること(ご参考)
なお、(1)のコストは他国でも課題とされており、世界全体の参加企業の70%が100%再エネ化の達成にはコスト削減が必要と回答しました。
レポートの最後には、目標達成のための第一歩として、EAC発行の仕組みを整えることが重要であると書かれています。そしてそのためには、政府のサポートが不可欠です。
現在日本でも、政府がCO2排出実質ゼロの目標を掲げたほか、国内初の大規模な商用洋上風力発電事業が秋田県沖で進められるなど、再エネ化に向けた動きが加速しています。
SDGs目標年の2030年まで、残り10年。
「Decade of Action(行動の10年)」であるこの期間に日本の再エネ化がどれほど進むのか、引き続き見守っていきたいと思います。
Photo by Lukas Bieri via Pixabay