欧州の人権デューデリジェンス法制化の動き

2020 / 12 / 28 | 執筆者:山本 香 Kaori Yamamoto

今では日本企業の間でも広く実施されるようになってきた「人権デューデリジェンス(HRDD)」。こちらの資料によると、その概念は、のちに「ビジネスと人権に関する指導原則」をまとめたジョン・ラギー氏によって2008年に初めて提唱されました。

それから10年あまり、欧州を中心に、国としてこのHRDDを義務化する動きが加速しています。英国やオーストラリアの「現代奴隷法(Modern Slavery Act)」やフランスの「企業注意責任法(Corporate Duty of Vigilance Law)」がその一例です。

そして今年4月、ついにEUとして、HRDDの法制化に向けて動き出すことが発表されました。来年の法制化を目指して、現在パブリック・コンサルテーションを実施し、広くステークホルダーの意見を募っている段階です。

今年10月、パブリック・コンサルテーションに先立って、国連のワーキンググループが欧州委員会に対し、法制化に関する提言を行いました。その内容から、HRDDを通じて本来目指すべきゴールが見えてきます。

提言の一部をご紹介します:
●The Directive should apply across value chains, not just within supply chains.
(試訳:同指令は、サプライチェーン内だけでなく、バリューチェーン全体に適用するべきである)

●The Directive should cover all EU undertakings and non-EU business enterprises which sell goods or services in the EU, and it should apply to both groups’ extraterritorial operations and business relationships.

(試訳:同指令は、EUの全企業およびEU域内で商品やサービスを販売するEU以外の企業も対象とし、EUの企業であっても、EU以外の企業であっても、EU域外での事業や取引関係にも適用するべきである)

●The Directive should go beyond reporting regimes and require meaningful processes and outcomes.
(試訳:同指令は、報告の体制を整えるだけでなく、有意義なプロセスと成果を義務付けるものとするべきである)

HRDDの対象を、従来のように一次サプライヤーや大企業に限定するのではなく、大幅に拡大し、報告のみならず結果を出すことまでを義務付けるべきだという内容は、ビジネスに関する人権問題の根絶という本来の目的に立ち返ると、当然と言えば当然のことでしょう。

それでも、提言を通じて頻出するmeaningfulという表現からは、HRDDを形骸化させない、問題の根を確実に絶ち、成果に結びつけるものにする、という本気度がうかがえます。

来年の法制化が待たれますが、EUのこうした動きは、いずれ日本企業にも影響を及ぼすはずです。各企業が自社の人権への影響を改めて確認し、適切な取り組みを進めるきっかけになることを願います。

Photo by kalhh via Pixabay

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