新彊問題にみる、サプライチェーンの人権侵害への対応

2020 / 10 / 1 | カテゴリー: | 執筆者:EcoNetworks Editor

2020年3月、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)は、少なくとも8万人のウイグル人が中国内の工場に移送され、少なくともグローバル企業83社(うち日本企業11社)がウイグル人の強制労働に関与していると報告しました(報告書P5)。

報告書の中で、大半の企業は強制労働への関与が示唆されるサプライヤーとの直接的な契約関係はないと回答していますが、同時に、サプライチェーン下層での関与を否定できる企業はありませんでした。

7月、180を超える人権団体が連携し、主要アパレルブランドに対して、綿や衣類の新彊からの調達や、ウイグル人の強制労働に関与している可能性のあるサプライヤーとの取引を1年以内に中止することを求めました。また、8月には機関投資家の人権イニシアチブ(IAHR)が投資家に向けて、ウイグル問題における人権リスクの評価指針を発表しました

こうした状況下で、アディダス、ラコステパタゴニアなど、いくつかの企業は既に新彊からのサプライチェーン撤退の意向を表明しています。

例えば H&Mもその一つですが、同社は新疆での生産や新彊からの製品の調達、強制労働への関与が調査で確認されなかったことを明言しています。その上で、万一に備えてこの地域との間接的な関与を断つという決断を下しました。

一方、日本の企業を見ると、「新彊綿」など今も新彊を前面に出して商品を販売しているケースが少なくありません。メディアで取り上げられることが少なく、売る側も買う側も、この地域が直面している問題の深刻さに気付いていないのかもしれません。

冒頭にあげた報告書に出ている83社の企業名を見れば、新彊をめぐるこの問題が、誰にとっても他人事となりえないことが分かります。

私は2019年の現地ルポ「ウイグル人に何が起きているのか」を読みましたが、何か一冊読んでみると、ウェブ上の断片的な情報についての理解が深まるように思います。一人でも多くの人がこの地域で今起きていることに関心を持ち、企業として、消費者として、社会を動かす力となることを願っています。

(翻訳者、翻訳コーディネーター/ Yasuko Sato)

Photo by bobbycrim via Pixabay

このエントリーをはてなブックマークに追加