地球の危機を克服する責任 Planetary Emergency Plan 2.0より

2020 / 10 / 30 | 執筆者:二口 芳彗子 Kazuko Futakuchi

この夏から何度か Planetary Emergency Plan 2.0 を読み返しています。これは、今年のアース・オーバーシュート・デーに合わせてローマクラブとグローバル・フットプリント・ネットワーク(GPN)が8月20日に開催したオンラインイベント で発表されたものです。

ローマクラブとポツダム気候影響研究所(PIK)によるこの資料は、その名が示すように地球が直面している危機をいかに乗り越えるかについての考察が書かれています。また多くの混乱と不安をもたらした新型コロナウイルスの感染拡大によって、私たちがいかに脆く弱い存在であるか、そして病気、自然、気候変動、公正と正義、金融部門、食料システムの深いつながりが浮き彫りになったことを述べています。

特に示唆に富み重要と考えるのは、この危機を乗り越えるために必要な「方向性」と「行動」が書かれている点です。今回はまず、方向性として示されている10の責任(コミットメント)をご紹介します。

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グローバルコモンズと公共の利益のための10のコミットメント(Plan P8より、筆者仮訳)

1. 2030年までに、重要な生態系をグローバルコモンズ(世界の共有地)や保護区として宣言し、管理責任体制のもと持続的に管理する。

2. 2025年までに、世界共通かつ全体で森林伐採の一時禁止措置をとる。森林保全と森林景観再生への投資を3倍にする。引き続く森林破壊、貴重な生態系の持続可能でない土地利用への転換に向けた投資を停止し、自然資本保護、再生式の土地利用慣行や最も影響を受けるコミュニティの公正な移行のための基金に転換する。

3. 北極での石油およびガスの採掘の一時禁止措置に署名する氷圏保存計画(Cryosphere Preservation Plan)を策定する

4. 重要かつ脆弱な海洋生態系および生息地の減少を食い止め、国連海洋法条約(UNCLOS)のもと厳格な新・海洋条約(New Ocean Treaty)を成立させる

5. 2025年までに、湿地・草原・サバンナの農地への転用を禁止し、それらの効果的な保護・再生と災害からの回復力強化への投資を3倍にする

6. 医療へのアクセス、疾病調査、知識交流や情報発信、市場監督、汚染防止、パンデミックへの対応など、不可欠な公共の利益の提供への投資を増やす

7. 重要な生態系の再生に公的および民間資金が投入されるよう促進する(次の10年間での緑の気候基金および地球環境ファシリティへの2000億ドル投入を含む)。

8. G7アマゾン緊急基金に加えて、グローバルコモンズのための、永続的な官民による地球緊急基金(Planet Emergency Fund)を2020年末までに創設する

9. 2020年末までに、グローバルコモンズを拠り所とするコミュニティ(現地農民、林業従事者、野生生物保護団体、先住民族など)を支援する、公正な移行基金に類似する政策手段および金融商品を導入し、それらのコミュニティが自分たちの生活を守り、将来のパンデミックに対する強靭性を高め再生農業や持続可能な林業へ移行できるようにする。

10. 2025年までに、上場企業、家族経営企業、地方自治体政府国家に対し、気候変動への適応策と緩和策、生態系保護と再生といった、グローバルコモンズのための科学に基づく目標達成を宣言し、環境への影響を開示し、自然資本に関する責任を負い、収支における自然の価値を評価するよう要請する。

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上記のコミットメントが提言しているのは、まず迅速な決断、そして生態系の回復への投資を3倍にするという大きな転換です。今年の年末までの残り2カ月で、重要な生態系であるグローバルコモンズに関する基金を創設し、2025年までに陸上の生態系の破壊を食い止め保全に投資し、2030年までに保護区に指定し持続的に保全管理していくという道筋です。先住民族や社会的弱者の公共の利益(public goods)を確実に保障する重要性も盛り込まれています。

日本も遅ればせながら先日、2050年に温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわちカーボンニュートラルな、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しました。しかし、もっと短期で目指す目標を設定することが必要で、国際環境NGOの気候ネットワークは、2030年目標を少なくとも温室効果ガス50%削減(1990年比)へ引き上げ、脱原発・脱石炭のエネルギーミックスを策定することなど、今回の表明を歓迎しつつも、さらなる行動を求めています

Planetary Emergency Plan は、どのような行動でこのコミットメントを実現していくのかも述べています。次回のブログでご紹介します。

 

Photo by anncapictures via Pixabay

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