この10年間の生物多様性

2020 / 10 / 25 | カテゴリー: | 執筆者:EcoNetworks Editor

2020年9月15日に、国連生物多様性条約事務局から『地球規模生物多様性概況第5版(GBO5)』(原題:Global Biodiversity Outlook 5)が発表されました。

ちょうど10年前の2010年に、第10回生物多様性条約締約国会議(COP10)が愛知で開催されたのですが、その際に「自然との共生(Living in harmony with nature)」という2050年までの長期目標(2050 Vision)のもと、「愛知目標(Aichi Biodiversity Targets)」が採択されていました。愛知目標は20の目標(Target)から成り、各目標が“2020年までに○○する”という内容(ただし、一部の目標は2015年まで)であったため、今回のGBO5はその達成状況をまとめた内容になっています。

その結果、20の目標のうち、完全に達成されたものは残念ながら1つもないことが判明しました。部分的に達成された目標は6つ。残りの14は未達成です。特に達成するどころか逆に悪化していることがわかったのが、目標5〔自然生息地(森林など)の劣化と分断を減少させる〕、目標8〔汚染(過剰栄養など)を有害でない水準に抑える〕、目標10〔気候変動や海洋酸性化の影響を受ける脆弱な生態系(サンゴ礁など)への人為的圧力を最小化する〕、目標12〔特に最も減少している絶滅危惧種の保全状況を改善させる〕でした。

GBO5全文ファイルを見ると、それぞれの目標がどの「持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)」に対応しているかも示されています。

今後のポスト2020目標については、既に検討プロセスが行われており、中国雲南省の昆明で開催されるCOP15で採択される予定となっています。COP15は、今年開催される予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で来年5月に延期が決まっています。

タイトルに「5」が付いていることからわかるように、本書はGBOの5冊目にあたります。エコネットワークスでは、これまでに発行されたGBO3(2011年)とGBO4(2015年)の日本語版制作をお手伝いしており、地球上の生物多様性が保全に向かっているかに注目してきました。今後の動向も引き続き注視していきます。

(五頭美知/翻訳者)

Photo by Marcello Rabozzi via Pixabay

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