Farm to Fork 食の持続可能性を目指すEUの野心的な戦略

2020 / 10 / 26 | 執筆者:立山 美南海 Minami Tateyama

欧州委員会が2020年5月に発表した「Farm to Fork(F2F)戦略」。この戦略が10月、欧州理事会により承認されました。これによりF2F戦略は、EUが現在検討を進めている共通農業政策(CAP)の改革方針に組み込まれていくことになります。また同戦略は、2050年までに気候中立(温室効果ガス排出実質ゼロ)の実現を目指す「欧州グリーンディール」の中核をなすものとしても位置付けられています。

EUはサステナビリティについて世界の最先端を走っていますが、食の分野でサプライチェーン全体を考慮した包括的な戦略を掲げるのは、F2F戦略が初となります。また消費者や生産者を中心に据えている点も大きな特徴です。この戦略の背景には、食料システムが気候変動や環境劣化の大きな要因であることや、気候変動の影響で食料安全保障が危ぶまれていることなどに対する問題意識があります。

F2F戦略が目指すのは、「公正で健康的で環境に優しい食料システム(a fair, healthy and environmentally-friendly food system)」の実現です。そのための取り組みとして、以下の6点が掲げられています。

  1. Ensuring sustainable food production
    (持続可能な食料生産の確立)
  2. Ensuring food security
    (食料安全保障の確保)
  3. Stimulating sustainable food processing, wholesale, retail, hospitality and food services practices
    (持続可能な食品加工、卸販売、小売、ホスピタリティ、フードサービスの促進)
  4. Promoting sustainable food consumption and facilitating the shift to healthy, sustainable diets
    (持続可能な食料消費の促進と、健康的で持続可能な食生活への移行の推進)
  5. Reducing food loss and waste
    (食品ロスや廃棄の削減)
  6. Combating food fraud along the food supply chain
    (食品のサプライチェーン全体での食品偽装の取り締まり)

さらに上記の取り組みに紐づく27の具体的なアクションが設定されています。

アクションの中で特に注目されているのは、「EU全域の農地の25%を有機農地に転換すること」「殺虫剤使用の半減」「肥料使用の2割削減」などです。これらのアクションはすべて2030年を目標年としており、実現可能性について疑問の声もあがっている一方、野心的であると注目を集めています。

F2F戦略の中で述べられているように、目標の達成には、人々の食生活の変化が不可欠です。一人ひとりの行動が食の未来を変えると意識し、そのための責任を果たすことが、個人にも求められているのではないでしょうか。

※英文下の括弧内は試訳です。

(立山美南海/翻訳者、翻訳コーディネーター)

Photo by Lyla Foggia via Pixabay

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