コロナ禍対応の中心に人権を

2020 / 8 / 27 | カテゴリー: | 執筆者:立山 美南海 Minami Tateyama

新型コロナウイルスはいまだ収まる気配を見せず、拡大を続けています。それに伴い、医療・健康面の影響に加えて、失業者の増加や不平等の拡大、差別などの社会的な問題も指摘されています。

国連環境計画(UNEP)は8月20日、『Human rights, the environment and Covid-19 key messages』と題したレポートを発表しました。

冒頭には次のように書かれています。

…we must protect rights to a safe, clean, healthy and sustainable environment upon which we all depend for our health and wellbeing.
(あらゆる人々の健康やウェルビーイングは、安全・健全で汚染されていない持続可能な環境にかかっており、そうした環境で暮らす人々の権利を私たちは守らなければならない。)

ここで言う「環境」には、地球環境の意味合いに加え、住生活環境のニュアンスも含まれています。UNEPはこれまでも、健全な環境は人権を享受するために不可欠な要素だとして、環境権(良好な環境の中で生活を営む権利)の重要性を主張してきました。

またUNEPは今回のレポートの中で、コロナ禍の影響を特に受けやすい貧困者や社会的に不利な立場にある人々を守るためにも、コロナ対応の際には「人権を根底に置く」ことが必要と述べ、加盟国や企業に求められる取り組みを8つのキーメッセージとして伝えています。

  1. Fulfill the right to a healthy environment
    (健全な環境で暮らす権利を守る)
  2. Re-think our interactions with nature
    (自然とのかかわりを見直す)
  3. Protect those living in poverty or subject to discrimination
    (貧困者や被差別者を守る)
  4. Strengthen environmental rule of law and protect environmental human rights defenders
    (環境分野における法の支配を強化するとともに、環境人権保護活動家を守る)
  5. Guarantee meaningful and informed participation
    (十分な情報を提供した上での意義ある参画を保障する)
  6. Minimize the harmful impacts of medical waste
    (医療廃棄物の有害な影響を最小限に抑える)
  7. Build back better
    (「より良い復興」を実現する)
  8. Learn from the COVID-19 crisis
    (コロナ禍から学ぶ)

コロナ禍がもたらした社会的な影響は、単にウイルスの感染拡大を食い止めるだけでは解決されません。人権を起点に物事を考えることで、コロナ禍で新たに生じた問題だけではなく、”Build back better”とあるように、コロナ以前からあった課題の解決にも近付けるかもしれません。

このUNEPのレポートがそのためのガイドラインとして広まっていくことが期待されます。

※英文下の括弧内は試訳です。

(立山美南海/翻訳者、翻訳コーディネーター)

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