Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
家族農業のmultidimensionality
私たちの食を支える農業。
そのほとんどが家族農業(family farming)という形態をとっています。食料生産だけでなく、環境、社会、文化的側面でも重要な役割を担っているこの農業形態を推進しようと、国連は2019~2028年を「国連家族農業の10年」(UNDFF)と定めました。
具体的な行動計画をまとめた「グローバル・アクション・プラン」を読むと、multidimensionalityというキーワードが目を引きます。
Strengthen the multidimensionality of family farming to promote social innovations contributing to territorial development and food systems that safeguard biodiversity, the environment and culture
地域開発、生物多様性・環境・文化を保護するフードシステムに貢献するイノベーションを促進するための多面的な家族農業の強化
(日本語訳:FAO駐日連絡事務所HPより引用)…family farmers not only produce food, but also provide several services and public goods for the society. Supporting this complexity and multidimensionality of family farmers can carry the promise to promote endogenous growth and preserve the diversity of ecosystems, genetic resources, culture and life.
・・・家族農家は食料を生産するだけでなく、社会のためになるいくつものサービスや公共財を提供している。家族農家の持つ複雑性と多面性を支えることで、内生的な成長の促進と、生態系や遺伝資源、文化、そして暮らしの多様性の保全が期待できる。(ENW試訳)
multidimensionalityは、複数の側面(multi + dimension)を持っているという意味の言葉です。
家族農業には、食料生産という側面以外に、「農業生態系や景観管理の持続可能性の確保」、「その土地に代々伝えられてきた知恵や文化遺産の継承」、「雇用創出をはじめとする社会的価値の提供」といった、実にさまざまな側面があるとされています。
そういうさまざまな側面を持つ家族農業を促進することで、持続可能な食料システムの実現、ひいては持続可能な社会の実現につなげていこうという考え方がUNDFFの基盤となっています。
UNDFFが掲げるビジョンは、SDGsで目指す未来とも重なります:
A world where diverse, healthy and sustainable food and agricultural systems flourish, where resilient rural and urban communities enjoy a high quality of life in dignity, equity, free from hunger and poverty.
多様性があり、健全で、持続可能な食料・農業システムが広まり、レジリエントな農村・都市のコミュニティが尊厳と公平性をもって、飢餓と貧困のない質の高い生活を送ることができる世界(ENW試訳)
「国連家族農業の10年」というこの機に、身近にある農業のmultidimensionalityに注目してみると、持続可能な未来につながるヒントが見つかるかもしれません。