「知っている」から「使える」表現へ come up with~を例に

2020 / 6 / 24 | 執筆者:山本 香 Kaori Yamamoto


翻訳者として、表現のバリエーションを広げておくことは大切ですが、そこでポイントとなるのは「いつでも使える状態にしておく」ということ。ぼんやり分かったつもりでいては、間違った使い方をしてしまいかねません。

知っているけど、理解があいまいな表現を“使える”表現にするには、次のステップをふむと効果的です:
★複数の辞書を引いて(英和、英英、類語)、おおまかな意味合いをつかむ
★たくさんの例文に触れて、文脈を理解する

今回のブログでは、「分かるようで分からない」状態に陥りやすい句動詞come up withを例として取り上げます。

まず手元の辞書にある代表的な定義はこちら:
(1)〈考え・方法など〉を見つける, 思いつく;〈必要なもの〉を作り出す, 捻出する, (持ち)出す,示す.
(『研究社 新英和大辞典』より引用)
(2)…を持ち出す, 提案[提供]する, 申し出る(propose).
(4)〈物〉を生産する;〈お金〉を工面する.
(『ジーニアス英和辞典』より引用)

次に、Collins Thesaurus(英英類語辞典)を引いてみると、同義語としてproduce、offer、provide、advance、offer、suggest、furnishなど実に多くの類語を確認できます。

こうした定義に共通するおおまかなニュアンスが分かってきたところで、実際にcome up withが使われている英文を見てみましょう。

【ニューヨークタイムズより引用】

If we all contribute to reducing community spread, we can buy enough time for science and industry to come up with a vaccine.

(試訳 私たち一人ひとりが地域での感染拡大防止に貢献すれば、科学界や産業界でワクチンが開発されるまでの時間を稼ぐことができる)

新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、どう行動するべきかについて書かれたコラムの一文です。コラムを読み進めると、Until a vaccine…can be developedという表現があることからも、このcome up withはdevelopの言い換えと理解できます。

Frustrated with the process and banks, they have to figure out how to stay afloat while Congress tries to come up with more funding.

(試訳 議会が資金を工面しようとしている間、手続きや銀行の対応にストレスを感じながらも何とか破産せずに乗り切る方法を見出さなければならない)

こちらは、新型コロナウイルスの感染拡大で多大な影響を受けた人々が政府からの支援を待ちわびているといった内容の記事のリード文。記事本文には、If additional funds do become available from Congress…やpossible release of additional rescue fundsとあり、「お金を用意する」というニュアンスが読み取れます。

【UN Newsより引用】

UN chief urges top digital tech panel to come up with ‘bold, innovative ideas’ for an ‘inclusive’ future

(試訳 国連事務総長、デジタル技術パネルに対し、「インクルーシブ」な未来に向けて「大胆かつ革新的なアイデア」の創出を要請)

こちらの英文ではideaを目的語にしていますが、他にもsolution(解決策)やsuggestion(案)を目的語として、devise(考案する)の意味でcome up withが使われる例は多数確認できました。

このように、定義を確認して、さまざまな例文にあたるというステップを地道に繰り返すうちに、ぼんやりしていたcome up withの輪郭が徐々にはっきりしてきます。その輪郭を感覚として身につけることができて初めて、“使える”表現になるのだと思います。

特に英文では、同じ語句の繰り返しを避けた方が良いとされる傾向があり(もちろん、キーワードなど、一貫して同じ語句を使用するケースもあります)、似た意味の言葉を関連付けて整理しておくと、バリエーションをつけたい時に非常に便利です。

そこからもう一歩踏み込んで、“知っている”を“使える”にするため、一つひとつの表現を主体的に自分の中に取り入れていく姿勢も同時に心がけていきたいと思います。

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