環境レイシズム ― 環境問題と人種差別問題の根っこはつながっている

2020 / 6 / 22 | カテゴリー: | 執筆者:EcoNetworks Editor

5月下旬に米ミネソタ州ミネアポリスで、アフリカ系アメリカ人男性が白人警察官に捕まり、首を膝で圧迫され続けて死亡した事件を受けて、人種差別に対する大規模な抗議デモがアメリカ全土に広がっています。そしてヨーロッパや日本でもデモが行われています。

そのスローガン”Black Lives Matter”(ブラック・ライブズ・マター、黒人の命は大切)は、今回同様アフリカ系アメリカ人が白人警官に殺された事件を受け、2013年から抗議デモで掲げられてきました。

この人種差別問題については、活動のメインテーマは違うところにある主要な環境保護団体も、このところそれぞれに声明を出しています。

グリーンピース(Greenpeace)
Statement from Greenpeace US in Response to Police Violence During Recent Protests
(仮訳)最近の抗議行動中の警察の暴力に対するグリーンピースUSAの声明

世界自然保護基金(WWF: World Wide Fund for Nature)
WWF speaks out on racial injustice
(仮訳)WWFは人種的な不公正に関して声を上げる

世界資源研究所(WRI: World Resources Institute)
WRI Statement Condemning Racism and Supporting Black Lives
(仮訳)人種差別を非難し黒人の命を守るWRI声明

天然資源保護協議会(NRDC: National Resources Defense Council)
NRDC Stands with Those Calling for Racial Justice
(仮訳)NRDCは人種的な不公正を訴える人々を支持する

このような動きを紹介するニューヨークタイムズの記事では、黒人環境活動家3人にインタビューを行い、人種差別と気候変動のつながりについて次のような発言を紹介しています。

“Police violence is an aspect of a broader pattern of structural violence, which the climate crisis is a manifestation of,”
<警察の暴力はさまざまな構造的暴力の一つの側面であり、構造的暴力が顕在化したのが気候危機だ。(試訳)>

“it is the poor who are more likely to be people of color in this country and who are often most vulnerable to the impact of climate change.”
<貧困層は、この国では有色人種である可能性が高く、気候変動の影響を最も受けやすいケースも多い。(試訳)>

“Public opinion polls show that African-Americans, along with Latinos, are, on average, more concerned about climate issues than whites.”
<世論調査の結果を見ると、アフリカ系アメリカ人およびラテン系アメリカ人は平均的に、白人よりも気候問題への関心が高い。(試訳)>

環境問題から受ける悪影響には人種によって差があるということは、environmental racism(環境的人種差別、環境レイシズム)という言葉で表現されています。これはimidasで次のように説明されています。

“環境レイシズムとは、アフリカ系・ヒスパニック系アメリカ人らの居住地近くに有害廃棄物処理場が多く作られたり、アメリカ先住民の保留地で放射性物質の開発が集中的になされてきた事実に見られるように、環境汚染や環境破壊の被害が「人種差別」の結果として不平等なかたちでもたらされる事態、およびそれを是認する考え方を指す。この環境レイシズムを告発し、環境に関する不正義を克服しようとする運動が「環境正義運動」であった。

トランプ米大統領の口から、こうした社会の不平等な構造を是正しようという話がいまだ出てこないのが気になりますが、今後少しでも公正な社会になっていきますようにと願っています。

(五頭美知/翻訳者)

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