Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
あなたはフェミニストですか?
女性の権利を考えるときに「フェミニスト(feminist)」という言葉をよく耳にします。
#MeToo運動に代表されるように女性が思い切って声を上げたり、政治やビジネス、その他さまざまな場面で女性が活躍するようになって、より良い社会に向けて大きく前進したはずなのに、このフェミニストという言葉には、どことなくネガティブなイメージがあります。
英国の調査会社YouGovの調べによると、Are you a feminist?(あなたはフェミニストですか?)と聞かれた場合と、Do you think men and women should have equal rights and status in society, and be treated equally in every way?(社会の中で男性と女性は同等の権利と立場を持ち、あらゆる面で同等に扱われるべきだと思いますか?)と聞かれた場合で、「はい」と答える人の割合が大きく違うことが分かりました。前者が後者を大きく下回ったのです。
この結果からも、「フェミニスト」を自認することを躊躇する人が多いことがうかがえます。
また実際、「アンチフェミニズム(Antifeminism)」や「ポストフェミニズム(Postfeminism)」といった、一見フェミニズムに相対する主張も生まれています。
アンチフェミニズム(Antifeminism):
Antifeminists argue against preferential treatment of women over men in our legal systems, the work place, schools and society in general. They wish to create a truly equal society which does not cater to either sex.(Urban Dictionaryより引用)
(アンチフェミニストとは、法制度、職場、学校、社会全般で、女性が男性よりも優遇されることに反対する人々のこと。どちらかの性別に偏ることのない、真に平等な社会の実現を目指す)
ポストフェミニズム(Postfeminism):
The belief that feminism needs to be extended and challenged to explain women’s experience and expectations that are constantly changing due to cultural and socioeconomic conditions.(Urban Dictionaryより引用)
(文化・社会経済的状況によって絶えず変化し続ける女性の経験や期待に応じて、フェミニズムの解釈を拡大したり、異議を唱えたりする必要があるという考え)
ここで改めてfeministの定義を見てみると、
a person who supports the belief that women should have the same rights and opportunities as men (Oxford Learner’s Dictionariesより引用)
(女性は男性と同じ権利と機会を有するべきだという考えを支持する人)
とあります。
この本来の定義が正しく認識されれば、「自分はフェミニストだ」と言い切れる人がぐっと増えそうです。
女性が権利を獲得してきた長い歴史の中で、新しい考え方が生まれ、フェミニストという言葉に対するイメージも変容してきました。それでも、根本に立ち返れば、男性も女性も平等に生きられる社会を目指すという一貫した主張が見えてきます。
何となく自分はフェミニストだと言い切れない人も、アンチフェミニズムやポストフェミニズムを支持する人も、結局目指すところは同じ。
そういう認識が広まれば、より良い社会の実現に向けて、さらに結束力を高められるのではないでしょうか。
「私はフェミニストです」の一言が、そのための第一歩になるかもしれません。
※英文に続く括弧内の文章はすべて試訳です。