炭素「排出(emissions)」の対義語は?

2020 / 1 / 30 | 執筆者:EcoNetworks

日本語では「排出」の対義語として「吸収」を使うことが多いのではないでしょうか。CO2の「吸収」の訳語として、ネイティブの翻訳者がsequester/sequestration(隔離する/隔離)という語を使っていたので調べてみると、「吸収する」=absorbと単純に置き換えられないことがわかりました。「当社は炭素吸収の取り組みを支援している」を英訳すると、例えば次のような文になります。

We support efforts to sequester carbon.

ここでabsorbを使うと、人や取り組みが炭素を吸収するような、おかしな表現になってしまいます。人は炭素を飲み込んだり、肌から吸収できません。炭素を吸収するのは、あくまでも森林や土壌や海洋などの吸収源(carbon sink)なので、この場合absorbは適切ではありません。

パリ協定ではemissions by sources and removals by sinks(発生源による排出量と吸収源による除去量)という文脈で、emissionsの対義語にremovals(除去)が使用されています。日本語では「排出」の対義語として「除去」を使うことは少ないように思いますが、英語では一般的です。emissions and sequestration(排出と隔離)も同じくよく使用されています。

remove(除去する)やsequester(隔離する)は主体が人でもモノ(吸収源)でも使えますが、absorb(吸収する)は主体がモノである場合に限られます。

炭素隔離というと、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage/二酸化炭素回収貯留)を思い浮かべる人も多いかもしれません。

CCSは工場や発電所から排出される二酸化炭素を大気放散する前に回収し、地下へ貯留する技術です。これはプラント施設を要する技術で、capture and storageは、人が実施する比較的大規模なプロジェクトに使用されます。

一方、sequestrationは、こうした人為的なプロジェクトから森林や土壌による吸収まで、隔離全般に使用できます。

2020年、パリ協定が実施段階に入りました。日本からも正しく伝わる英語で世界に情報を発信できるよう、これからも丁寧に訳語を調べていこうと思います。

(翻訳者、翻訳コーディネーター/ Yasuko Sato)

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