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気候変動の影響、日本が世界一に
ドイツのジャーマンウォッチ(Germanwatch)というシンクタンクが今月上旬、『世界気候リスク指数2020』(英文、原題:Global Climate Risk Index 2020)という報告書を発表しました。
これによると、2018年に気候変動による影響を最も受けた国は、日本でした。正直なところ私自身もそうでしたが、自分たちがそこまで世界の中でもひどい状況にあったとは、思いもよらなかった方も多いのではないでしょうか。日本に次ぐ第2位はフィリピン、3位はドイツ、そして4位マダガスカル、5位インド、6位スリランカ、7位ケニア、8位ルワンダ、9位カナダ、10位フィジーと続きます。
日本の順位を押し上げたのは、2018年7月に広島県や岡山県など西日本を中心に甚大な被害をもたらした豪雨と土砂災害、その後の酷暑による相次ぐ熱中症、そして9月に近畿地方などを襲った台風21号と説明されています。このような気候変動関連の死者数は計1,282人にのぼり世界第2位、損失額は358億米ドルで世界第3位の多さでした。
また、日本に続く第2位のフィリピンは、その次に発生した台風22号がこれも大型で強い台風となり、大きな被害を受けました。3位のドイツは、熱波により多くの死者が出るとともに、干ばつによる凶作で大きな損失が発生しました。
一昔前は、気候変動への適応策(adaptation)が必要な場所というと、海面上昇により人が住めなくなってしまう小島嶼国がパッと頭に浮かんだものです。気候変動枠組条約の締約国会議(COP)では、こうした脆弱な国が、まだ経済成長を追い求めたい大国に対して今すぐ排出量を減らしてほしいと訴えるイメージがありました。先進国の目からは、気候変動の被害はどこか人ごとのような感覚が否めませんでした。
ところが、ジャーマンウォッチもこの報告書の発表時に触れているように、昨今では先進国でも気候変動の影響が顕著になっています。
High income countries feel climate impacts more clearly than ever before. Effective climate change mitigation is therefore in the self-interest of all countries worldwide.
<高所得国が、これまでになかったほど明らかに気候の影響を感じています。従って、効果的な気候変動の緩和策をとることが、世界中のすべての国において自国の利益にかなうのです。(試訳)>
その後スペインのマドリードで開催されたCOP25では、「損失および損害」(loss and damage、「損失と被害」あるいは「ロス&ダメージ」とも訳されています)も議題にあがりました。COP25では、パリ協定の詳細ルール作りでは残念ながら合意に至りませんでしたが、損失および損害に関しては、2013年のCOP19で設立された「ワルシャワ国際メカニズム」(Warsaw International Mechanism for Loss and Damage)のレビューが行われ、技術支援を促進する「サンティアゴネットワーク」(Santiago Network)の設置が決まっています。
先進国も、善かれ悪しかれこのテーマの議論に切迫感をもって参加するようになっていくのかもしれない、そんなイヤな予感もします。
(五頭美知/翻訳者)