「気候危機」への当事者意識を刺激するために

英国ガーディアン紙は5月、環境関連の用語選択に関するスタイルガイドを更新し、「気候変動」の代わりに「気候危機(climate crisis)」、「地球温暖化」の代わりに「地球酷暑化(global heating)」など、危機感がより正確に伝わるような用語を使っていく方針を定めました(こちらのブログ記事でご紹介しました)。

そのガーディアン紙が10月18日、記事に添える「写真」についても新たにガイドラインを定めると発表しました。

同紙は記事の中で次のように述べています。

At the Guardian we want to ensure that the images we publish accurately and appropriately convey the climate crisis that we face.
(試訳)ガーディアンは、我々人類が直面している気候危機について正確かつ適切に伝えられるような写真を掲載していきたいと考えている。

そのような写真を選ぶ際の基準を定めるため、同紙はClimate Visualsという調査機関にアドバイスを求めました。

そして得られた答えが「人物が写った写真の方が人は反応しやすい」ということでした。

気候変動の影響を伝えるため、これまでは汚染物質を吐き出す煙突、溶けて小さくなった氷に乗るホッキョクグマ、山火事などの写真がよく使われてきました。しかし、このような写真だと読者はあまり具体的にイメージできず、自分には関係のない遠い話のように感じてしまいます。

写真を見る人々の当事者意識を刺激し、「早くなんとかしなければ」と感じさせるには、人物が写った写真が一番良いという結論に達したのです。

…we should consider showing the direct impact of environmental issues on people’s daily lives as well as trying to indicate the scale of the impact…
(試訳)環境問題が人々の日常生活に及ぼす直接的な影響を視覚化すると同時に、そうした影響の甚大さを示せないか、我々は検討すべきだ。

気候危機の影響は目に見えない形で現れていることも多く、またニュースの性質上写真選定にかけられる時間は限られていることから、難しさもあると同紙は語っています。

それでも、「言葉遣いを変えるなら写真も変えるべきだ」と考えて方針を打ち立てようとしており、報道機関としての強い使命感がうかがえます。

言葉の力と写真の力をうまく掛け合わせれば、もっと多くの人を動かせる。こうした取り組みがこれからどう広がっていくのか、そしてどのような結果につながるのか、期待しつつ見守っていきたいと思います。

(翻訳者、翻訳コーディネーター/立山美南海)

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