「climate crisis 気候危機」への危機感

2019 / 10 / 25 | カテゴリー: | 執筆者:EcoNetworks Editor

今年5月に英国「ガーディアン」紙がclimate changeの代わりにclimate crisisを使用する方針を発表したのは、既報の通りです。

“climate crisis”という英語が初めて出てきた時、どう和訳するのがいいか迷いました。文中にいきなり”気候危機”という耳慣れない言葉が出てきたら、唐突すぎないか。初出で「気候危機」とカギ括弧でくくれば大丈夫か。それとも丁寧に柔らかく”気候の危機”としておくか。

その時に私の出した結論は、”気候の危機”と訳しておくのが一番自然だろう、でした。

それがどうでしょう、半年も経たないうちに、今では”気候危機”という言葉に違和感がなくなってきたと感じます。まさに「言葉は生き物」です。

Googleで”気候危機”というフレーズで日本語のページを検索してみると、ヒット数は10万件を超え、朝日新聞、産経新聞、日経新聞、NHK、東京新聞など大手メディアのサイトが並びます。特に朝日新聞では9月の国連気候行動サミットに向けて、ズバリ「気候危機」と題した企画が行われていました。当初に同じように検索した時とは、様相がまるで異なります。これなら「経済危機」「石油危機」「食糧危機」などと並んで「気候危機」も使っていいでしょう。

10月上旬に私はアル・ゴア元米国副大統領が東京で初めて開催したクライメート・リアリティ・リーダーシップ・コミュニティ・トレーニングに参加しましたが、そこでも”気候危機”という言葉が当たり前に使われていました。ゴア氏も、他の登壇者の方々も、そして参加者の間でも。

特にゴア氏のプレゼンテーションの中で次々に映し出された、2017年以降に世界中で起きた洪水の写真――米国、プエルトリコ、メキシコ、ペルー、ブラジル、パラグアイ、アルゼンチン、英国、ドイツ、ケニア、モザンビーク、ジンバブエ、ロシア、イラン、パキスタン、インド、ネパール、バングラデシュ、ミャンマー、ベトナム、フィリピン、インドネシア、ニュージーランド、中国、そして日本(宮崎、熊本、佐賀、福岡、広島、岡山、和歌山、大阪、秋田)――を見ると、心がふさぎ、「危機」「危機感」「危機的状況」という言葉こそがこの問題にふさわしいと実感しました。

トレーニング中のパネルディスカッションでモデレーターがおっしゃっていた言葉「私は、日本で気候危機への危機感がないことに、危機感をもっている。また、日本企業が世界の潮流から取り残されていることに危機感がないことにも、危機感をもっている」が胸に刺さり、深い共感を覚えました。

(五頭美知/翻訳者)

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