Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
温暖化ではなく「酷暑化」 表現を選ぶ姿勢
2019 / 7 / 9 | カテゴリー: 【環境】翻訳者が考える環境課題 | 執筆者:二口 芳彗子 Kazuko Futakuchi
5月に英国ガーディアン紙がスタイルガイドを更新し、世界で起きている危機的な自然災害を正確に表す用語を取り入れていく、と発表しました。
従来の用語を禁止するわけではないとするものの、「気候変動」の代わりに「気候の緊急事態/気候危機/気候崩壊(climate emergency, crisis or breakdown)」、「地球温暖化」のかわりに「地球酷暑化(global heating)」が好ましいとしています。
その理由として、この重要な課題について読者と明確なコミュニケーションをするよう徹底したい、具体的には、人類が直面している大災害について科学者が議論しているというのに、気候変動と言う言葉は、やや受け身で穏やかな表現に思われると述べ、国連や英国気象庁といった気候関連の科学者や団体もより強い言葉遣いをするようになったことも背景として説明されています。
このニュースを読んだとき、いよいよか、という思いと同時に、社会の変化を確実に捉えて自らの表現に反映していく姿勢に勇気づけられました。そして、翻訳チームという立場でどう考えていくべきかとも思いました。
翻訳は、ある言語で書かれたものを別の言語に置き換えること、原文にこめられた意味を正確に伝えることに尽きます。新しい言葉が生まれたり、選ばれていくとき、それを別の言語でどう表すかを日頃から考えていなければ、そのためにもどのような言葉が今使われているのかを常に意識していなければ、との思いを新たにしています。
注:ガーディアン紙の記事内容に関する本文中の日本語は、当社での試訳です。