「牛乳配達」モデルで作る循環型社会

2019 / 6 / 25 | カテゴリー: | 執筆者:立山 美南海 Minami Tateyama

ウォール・ストリート・ジャーナルのある記事を読んでいると、milkman-style modelという言葉に出会いました。

Milkman-styleは、「牛乳屋スタイル」。牛乳配達のように、空の容器に中身を詰め替える再利用の方法を表す言葉です。牛乳配達自体はあまり見られなくなりましたが、その再利用のあり方が改めて注目を浴び、「牛乳屋スタイル」の新たな取り組みが生まれています。

その一つが、ネスレ、ユニリーバ、P&Gなど計25社が米TerraCycle社との提携で進めるオンライン販売の試験的取り組みです。TerraCycleの運営するショッピングサイト「Loop」上で、ハーゲンダッツやパンテーンなど、様々な食品・日用品の中からユーザーは好きな商品を選び、購入できます。商品は、再利用できるトートバッグに入って届き、各商品のパッケージにも最大100回再利用できる瓶や缶などが利用されています。中身を使い終わったらTerraCycleが容器を回収し、洗浄・詰め替えを行います。

こうした「牛乳屋スタイル」が注目される背景として、ごみのリデュースやリユースの重要性が再認識されている状況があります。廃棄段階などの下流側ではなく上流側で対策を講じ、ごみの発生自体を抑制しようという考え方が重視されているのです。

その理由の一つが、リサイクルの問題点の顕在化です。特に、廃プラスチック最大の輸入国だった中国による2017年末の廃プラ輸入禁止が大きなきっかけでした。中国に続いてアジア各国も次々と輸入規制を導入し、リサイクルされるはずの廃プラが行き場を失いました。日本国内でも処理が追い付かず、政府は、区市町村の焼却施設で廃プラ類を処理するよう求めています。

そんな中、P&Gなどの世界的企業が再利用に取り組むことは、とても意義のあることだと感じます。Loopの試験は、パリとニューヨークでは今年5月から既に始まっており、2020年には東京でも開始される予定です。

ただ、配送料に加えて容器ごとにデポジットがかかるなど、消費者にとっての壁も残ります。しかしユーザーが容器を洗う必要はなく、この点では、消費者の負担が軽減されます。

サブスクリプション(定期購入)にも対応したeコマースである同サービスは現代のニーズにも合っており、また今後、「モノの移動」に関してもMaaSが発展していけば、こうしたサービスがさらに拡大していくことが期待されます。

古くからある「牛乳屋スタイル」が新しい技術とも融合し、これからの時代の常識になって欲しいと思います。

(翻訳者、翻訳コーディネーター/立山美南海)

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MaaS=Mobility as a service(移動を一つのサービスとして捉え、最適化すること)

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