原語と訳語のギャップをどう埋めるか

カタカナ用語は要注意。翻訳者の間では事あるごとに繰り返す警告です。

例えば「リテラシー」。広辞苑では「読み書きの能力。識字。転じて、ある分野に関する知識・能力」ですが、後半の意味に特化して使われている場合がほとんどです。

リテラシー向上、リテラシーを高める、リテラシーが高い/低い、など、どのような言葉と組み合わせて使うのかも注意が必要です。

その他、information literacyは「情報リテラシー」、financial literacyは「金融リテラシー」という風に「漢字+リテラシー」の訳し方が定着しています。

東日本大震災以降、「防災リテラシー」教育が自治体や教育機関で議論されることが多くなりました。日本大百科全書は、災害に遭遇したとき、目の前の状況に対して適切に行動し、想定外の事態から自分自身を救う能力のことを意味し、リテラシーは広義で「生きる力」を表すとしています。

では、英語で「防災リテラシー」とは?

オックスフォード大学と香港中文大学の共同研究機関CCOUCは、近い言葉のdisaster risk literacy を以下のように定義しています。

Disaster risk literacy refers to the ability to identify, understand, interpret, and communicate disaster risk-related information.
Disaster risk literacyとは、災害関連の情報を特定、理解、解釈、伝達する能力を表す。

どちらかと言うと、災害発生時における情報リテラシーとコミュニケーション能力、といった意味合いです。

関連の研究論文でのdisaster literacy、disaster management literacy も上記の例と同様で、日本語の防災リテラシーより狭義、情報処理・伝達能力に特化しているニュアンスです。日本語の生きる力 = competence to survive/ save life(生き残る能力) のように包括的な能力ではなさそうです。

原語と訳語のギャップがないのがベストですが、なかなか難しいのが現実です。それでも限りなく同義となるように、それぞれの言語での意味合いを確認することが必要です。想定するキーワードを複数入力し、信頼性の高い情報での言葉の意味を確認し、次に” ”でくくってフレーズ検索も行います。その上で、クライアントの意図に合致するものを選択していくようにしています。

翻訳は、初めからその言葉で書かれていたかのように、筆者の意図が伝わるのがベストです。そのためにあらゆる手を尽くすチームでありたいと思っています。

――――――
CCOUC: Collaborating Centre for Oxford University and CUHK for Disaster and Medical Humanitarian Response

 

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