IntegrationとInclusionとの違いから未来の社会を考える

2019 / 1 / 11 | 執筆者:二口 芳彗子 Kazuko Futakuchi

以前、「Inclusive =インクルーシブを理解するために」のブログで、対義語からインクルーシブ/インクルージョンをどう考えるかについてまとめました。

最近、この概念についてわかりやすいインフォグラフィックスに出会いました。特別支援教育の学習環境に関して起こりうる状況を4つに分類しているもので、教育現場を想像しながら、ご一緒に考えていただけたらと思い、ご紹介します。

National Development Team for Inclusion, UK

以下の引用部分は画像内の英文の試訳です。その後に個人としての解釈をお伝えしていきます。

Exclusion(排除)生徒が直接的あるいは間接的に、あらゆる形式の教育を受けられない場合に起こる。

オレンジの輪=教育、その輪に入っていないいくつかの点が、教育の機会を得られていない生徒を表しています。

Segregation(分離)特定のあるいは様々な障がいに応じて考案され用いられる環境で、障がいのない生徒から分離した状態で障がいのある生徒の教育が行われる場合に起こる。

障がいの有無によって、別々の教育機関にいる状況です。例えば、目の見えない生徒と目の見える生徒は、互いに触れ合う機会はありません。

Integration(統合)障がいのある人が、既存の主流の教育機関の条件に適応しうる限り、そのような教育機関に就学している場合。

例えば障がいのある生徒が通常の小中学校(大きな輪)に通いながら、学習や生活上の困難を改善したり克服したりする場合に、特別な指導を特別の場(小さな輪)で受ける状況と考えます。

Inclusion(インクルージョン)適齢期のすべての生徒に公平な参加型の学習体験、生徒が必要とするものや好き嫌いに最も適した環境を提供する上での障壁を克服するのに役立つように、教育における内容や教授法、生徒への接し方、構造や戦略の変更を可能にするような、教育システムの改善プロセスを含む。例えば組織や、カリキュラム、教授法や学習戦略への構造上の変更を伴わない主流のクラスに障がいのある生徒を含めるのは、インクルージョンとは言えない。さらに、統合は自動的に分離からインクルージョンへの移行を保証するものではない。

インクルージョンに関する説明は、上記の通りです。統合とインクルージョンの違いを一言でいうと、前者は多数派の教育機関に合うように少数派を支援する(少数派に働きかける)のに対し、後者は制度や仕組み、環境を変えることを必須と捉えている(人ではなく構造や仕組みに主眼を置く)ことではないでしょうか。

インクルージョンのインフォグラフィックスから私が感じ取ったのは
・ひとつの輪の中に全員がいる
・統合のインフォグラフィックスでは小さな輪に閉じ込められている点が、インクルージョンではひとつの大きな輪の中にあり、いる場所が自由
ということでした。

日本でインクルーシブな教育を実現している例を、残念ながら知りません。しかし、耳で聴かない音楽会のことを思い出しました。日本フィルハーモニーが演奏するクラシック音楽を、聴覚支援システムのサウンドハグ(SOUND HUG、膝の上に置く丸い球体)とオンテナ(Ontenna、髪の毛につける装置)によって映像や光、振動に変えて「身体」で楽しむ試みです。

私は偶然、聴覚特別支援学校での実証実験の映像を見かけました。「何、これ?!」といった表情で、お互いを見つめて手話で会話する生徒さんの笑顔がとても印象的でした。

同じ空間で同じ時に、すべての人が自分のあらゆる感覚で音楽を楽しむ。インクルージョンの重要なポイントは、お互いの強みや弱みによってそれぞれ感じ方も違うことを直接共有できることのように思います。SDGsが目指す「誰も排除しない社会」が目指す姿も同じだと思うのです。

関連情報:
音と静寂を堪能し、音楽の将来を垣間見ることができた日曜日 『耳で聴かない音楽会』体験記(Asahi Shinbun Digital [and]、2018年4月24日)
https://www.asahi.com/and_M/articles/SDI2018042474191.html

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