Overtourism(オーバーツーリズム)~千客万来の弊害

2018 / 10 / 24 | カテゴリー: | 執筆者:Yukiko Mizuno

Photo by Richard Allaway

Overtourism(オーバーツーリズム)は2016年頃から使われるようになった比較的新しい造語で、国連世界観光機関(World Tourism Organization:UNWTO)の報告書では以下のように定義しています。

The impact of tourism on a destination, or parts thereof, that excessively influences perceived quality of life of citizens and/or quality of visitors experiences in a negative way.
(意訳:観光が、訪問先またはその一部に対して、市民生活や観光客の体験の質に過度の悪影響を与えるような効果をもたらすこと。)

多くの国や自治体が、経済発展に貢献する重要な産業として観光に力を入れています。観光客が人気観光地に押し寄せることも、それ自体は新しい現象ではありません。しかし近年、スペインのバルセロナやイタリアのベネチアなどの欧州の観光地でデモが行われるなど、観光に対する不満を訴える行動が増加してきたことから、重要な課題として注目されるようになりました。日本でも、京都の観光スポット周辺のバスが観光客で混雑するといった市民生活への影響が見られます。

米国の旅行ガイド大手フォダーズでは、さまざまな理由から訪れるべきでない旅先のリスト「No List 2018」を発表しています。第一位は動植物の固有種が数多く生息するガラパゴス諸島で、これに続く第二位が「The Places That Don’t Want You to Visit」。つまり、観光客がもたらす経済的な恩恵よりも負担のほうが大きいことから「来訪が歓迎されない場所」です。潟の生態系に与える影響などから、数年後には大型クルーズ船の市中心部への航行が禁止になるベネチアや、観光客の入場制限が導入されたペルーのマチュピチュ、人口80万人の都市に毎年500万人の観光客が訪れるオランダのアムステルダムなどが例として挙げられています。

オーバーツーリズムの原因は、民泊の普及や格安航空会社の進出、新興国の経済発展などにより観光客の絶対数が増えていることに加え、特定の場所に観光客が集中しやすいことなどが挙げられます。これに対し、旅行者を受け入れる国や自治体では、訪問地や訪問の時期・時間帯を分散させる、規制の見直しを行うなどの取り組みを進めています。

こうした現状を踏まえ、私たち市民にできることは何か? 旅や観光は、自らの体験であると同時に、自分の意志を表す行動であり、その土地に何らかの影響を残すものです。そこで暮らす人々や地域の自然、将来の世代のことなども考えて、旅行先の選び方、その土地での行動に責任を持ちたいものです。

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