環境を守る―訳語の変化や違いの研究

2018 / 7 / 31 | 執筆者:二口 芳彗子 Kazuko Futakuchi


Photo by “Fiji Marine Conservation” by Frontierofficial is licensed under CC BY 2.0

「環境を守る」「環境保全」と聞いて、皆さんの頭に浮かぶのはどんな英語でしょうか。
よく見かけるのは、以下の3つ。
1. protect the environment / environmental protection
2. conserve the environment / environmental conservation
3. preserve the environment / environmental preservation

英英辞典でニュアンスを確認しながら、それぞれの違いを比較してみます。

1. protect
protect は、危険物やケガ、ダメージ、敵など「何らかの危険から保護する」ことを表し、
guard(護衛する)、shield(遮断する)と同義で使用することもある動詞です。
Merriam-Webster

米国環境保護庁(Environmental Protection Agency)が設立されたのは1970年。
大気汚染や水質汚濁などさまざまな環境破壊が表面化し、
国際的な議論も活発になった当時は、破壊から環境を保護することが
環境対策だったことが伺えます。

2. conserve
conserve は「安全で健全な状態に保つ」「大事に使う、浪費しない」ことを表し、
Merriam-Webster の例文として
conserve natural resources 自然資源を大切に利用する
conserve our wildlife 野生の生き物を守る
が、挙げられています。

3. preserve
preserve は protect と同義で「保護する」ことを表すほか、
「できるだけ元の状態のまま保存する」
「変化しないように維持する」ことを表し、
例えば遺跡の保存や食物を腐敗から守る場合に使用されます。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

ENWの翻訳チームでは、環境保全の訳語としてconserveを使用しています。
翻訳を監修いただいた生物多様性の研究員の方も、
biodiversity conservation を選択されており、
環境保全に関する専門資料で圧倒的に多いためです。

現在の環境活動は、自然環境からの恵み(自然資本)を効率的に活用しながら、
健全な状態に保つことを目指すフェーズとなっており、
単に保護する(protect)フェーズは卒業したと考えます。

preserve を使用している例も見かけますが、
プリザーブドフラワーが一般的になっていることもあって
形状や色が「生きている時のまま保存」されているものの
「生きていない」ニュアンスを避けたいので、使用を避けています。

クライアントが表現したいニュアンスを最優先しながら
コンテクストによりふさわしいアップデートされた用語の選択を心がけます。

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