Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
プレイン・イングリッシュII:事例紹介
昨年ブログでご紹介した米国証券取引委員会(SEC)の『A Plain English Handbook』。
巻末でいくつかの文書を取り上げて、具体的な改善例を提示しています。
「分かりやすさを最重視し、平易な単語や表現、構造を意識的に使う」
無用に複雑・難解な文書を、プレイン・イングリッシュでどこまでシンプルにできるのか?
ひとつの例として、MBNA Master Credit Card Trustという米国企業の開示文書が取り上げられています。表紙ページの改善案がBefore/Afterで分かりやすく示されているのですが、同じ情報を含む文書とはとても思えません。テキストの量が大幅に少なくなっています。
元の文書に対して、次のような厳しい指摘が入っています。
・1文、1行、1段落が長い
・曖昧/専門家にしか分からない用語が多い
・表紙ページにいらない定義語が多い
・一般的な言葉にも不要なキャピタライズをしている
・受動態が多く、文が余計に長くなっている
・大事な情報がどこにあるのか分かりづらい
<Before>
これに次のような改善を加えています。
・注目してほしい情報を左の囲みに明記
・平易で具体的な日常語、能動態を使う
・段落を短く、箇条書きに
・主な事項(ここでは3つ)に情報を分類
・定義語を使わない
・不要なキャピタライズをしない
<After>
本当に必要な情報はこれだけだったのか、と驚かされます。
極端な例かもしれませんが、文章をそれらしく、専門的に、あるいは格調高く見せようと、無意識のうちに過剰な説明を加えたり、難しい言葉を使ってしまうことはよくあります。手元の情報を絞り込んで簡潔な文書を作成するのは、たしかに容易ではありません。
しかし誰が見ても<Before>より<After>の文書のほうが、手に取ろうという気になるのではないでしょうか。「もっと簡単に言えないか?」「もっと短く言えないか?」と自問することを忘れずに、ハンドブックが推奨するような”clearer and more informative documents(明瞭かつ有益な文書)”の作成を目指したいものです。
Images from “A Plain English Handbook – How to create clear SEC disclosure documents” The Office of Investor Education and Assistance, U.S. Securities and Exchange Commission, August 1998
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